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2006年8月24日 (木)

D.ヒューム『人性論(一)』

 10年ほど前にリクエスト復刊されたときに買っておいたものですが、9月からドゥルーズのヒューム論の原書講読会を主催することもあり、ようやく読む気になりました。翻訳が1948年のものなので訳文や用語は古いのですが、英文の意味はかなり正確に捉えられているように感じます。あとはこちらの想像力です。
 哲学書の例に漏れず、かなり考えながら読みましたが、それだけ得るものはあります。考えれば考えるほど面白い、不思議な哲学です。何より理性というものをこれほど信頼していない哲学者はそうはいません。そのストイックなまでの不信は何に基づいているのでしょうね。
 ヒュームの時代背景を考えても、真理とか本質とか言ってしまうとよっぽど楽だったろうと思いますが、代わりに観念の連合とか、勢いとか反復とか習慣といった独特の用語で思考を展開していきます。反復が習慣になり人間の持つ印象を限定することで必然が登場するのであって、必然的な因果関係というものが客観的に存在するのではない、ということになります。
 それにしても、幾何学的な観念、例えば三角形といった観念はどうやって説明するのかと思わないでもありませんが、要するに人間の不完全な理性で完全性を描写することがそもそも間違っているという信念があるようです。そして、こうしてみると、ヒュームがカントに与えた影響の深刻さも多少わかってくるような気がします。
しかし、こんな完成度の高い本を25歳の若さで書いてしまうとは、驚くべき早熟です。哲学には天才というのはないものだと思いますが、早熟というのは確かにあるようです。

(大槻春彦訳岩波文庫1995年670円)

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