D・ヒューム『人性論(二)』
ヒュームの二巻目読了しました。対象と印象との間をつなぐものは想像あるいは「虚想」しかないという主張ですが、このことをかなり周到に論証した後で、本書の後半では、そういうことを言ってしまって世の中の人の多くを敵に回すだけでなく、自分でも何も言えなくなってしまうという内容のことを結構正直に書いています。「かような発見は[原因の考察に於て]仮初めにも得心できると思う希望を悉く断つだけでなく、[考察しようとする]願望そのものまで妨げさえする」(121頁)と言っています。
しかし、他のところで、当該対象の「性質が印象と共通でない限り、心はこれを思うことができない」(88頁)とも言っているので、〈認識はできないが共通する事実〉という出口はすでに開けています。これをカントのように突破するのも一つの有力な方法でしょうが、ヒューム本人は開き直って『イギリス史』などのベストセラーを立て続けにヒットさせ、豊かな印税生活を送ったと見ていいのかどうかは、残りの巻を読んでから判断します。
それにしてもヒュームの懐疑論的認識論は強力なので、宗教関係者から総スカンを食らったというのはうなずけます。スピノザの理論を批判しながらも、スピノザの議論のヘンなところは神学者のヘンなところと性質としては同じだ、と言ったりするのですから、彼らの目には神経を逆なでするような所業と映ったことでしょう。
(大槻春彦訳岩波文庫復刻版1995年460円)

