杉本信行『大地の咆哮 元上海総領事が見た中国』
元チャイナスクールの外交官が癌と闘いながら書いた本です。文章は明快で内容的にもバランスがとれています。とても元官僚が書いた本とは思えません。
靖国問題については宗教的意味を国内外にねばり強く説明しながら分祠の方向で検討するという立場ですが、その際決して外国に言われたからといって参拝を中止してはならないと言います。そうするとカネのためにプライドを捨てる国としてかえって甘く見られ、結果として国益を甚だしく損ねることになると警告しています。さすがに著者は中国人の側の理屈とメンタリティーがよくわかっています。
また、中国の農民のとてつもない窮状も客観的資料とともに活写されており、一読の価値があります。巻末に付録として収録された「日中を隔てる五つの誤解と対処法」はコンパクトで著者の立場がよくわかります。まずここから読むのもいいかもしれません。
本書が著者の遺作にならないことを願っています。
(PHP研究所2006年1,700円税別)
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