アマルティア・セン『合理的な愚か者-経済学=倫理学的研究』
「みんながそうするから正しい」という考えのおかしさと、「上を向いて寝ようが下を向いて寝ようが勝手でしょ」という自由をどのように保障するかという問題を真剣に考えると、こういう研究になるのかもしれません。経済学内部でのこの手の専門的議論をたどるのは実際、面倒くさいですが、センの場合はその人柄の良さがそこはかとなくにじみ出てくるような語り口です。きっと、いい人なんでしょうね。
鋭い論理だけでなく、発想が柔軟で、複雑な議論の脱出口をいろいろと探ることに長けているのがこのセンの特徴のように思います。権利放棄を鍵としてみたり、人間の能力の潜在性に焦点を当ててみたりで、いろいろと新鮮な刺激を与えてくれます。『ヤバい経済学』のレヴィットの才能を擁護したのがセンだという話もうなずけます。方向は同じで、かつ先駆的な業績がこの論文集に収められています(ま、あそこまでハジケてはいませんが)。
(大庭健・川本隆史訳、勁草書房1989年3,000円+税)

