遠藤寛子『算法少女』
江戸時代の数学好きの少女が主人公のジュニア小説です。長らく品切れ状態でしたが、ちくま学芸文庫として復刊を果たしたのはめでたいことです。かなりよく作り込まれたお話で楽しく読めますし、江戸時代の学問をとりまく空気もうまく再現していると思います。解説によると江戸時代に町医者の親娘が書いた『算法少女』という本は実在するそうで、二度びっくりです。5回くらいの連続ドラマになると、いい感じになるのではないでしょうか。
ただ、本田利明が開明的な人物として登場するのは当然でいいのですが、その人物の口から「この国では」という台詞が出てくるとちょっといやな感じです(195頁)。自分の国のことなら「日本」とか「わが国」ではないでしょうか。亡命者でもない限り、ふつう人は国を選べないでしょう。でもこうして小説の台詞として出てくると、本田利明といえども、ひょっとしたらそんな精神的亡命者あるいはお調子者の一人だったかもしれないという気もしてくるから不思議です。
(ちくま学芸文庫2006年900円+税)
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