畑村洋太郎『失敗学実践講義-だから失敗は繰り返される』
JR福知山線脱線事故や森ビルの回転ドア事故といった近年の大事故を題材にとり、具体的に失敗を分析した本です。人間の注意力や集中力には限界があるということを自覚し、それを見越して自分で対策を立てる(77頁)べしという主張は大事故を避けるための鉄則だと思います。このことを「いい加減にやる」という表現を用いるところが著者らしいところです。その心は、本当に優先すべきことを取捨選択し、要求されたことに適度に対応する(同頁)ということですが、きまじめな人は誤解するかも。
それはともかく、言われてみればもっともながら、忘れがちになる事柄が、実に正確に指摘されています。火災については「何でも燃える」という前提から出発するという具合です。実際に鉄そのものは燃えなくても塗装や内装材、作動油、潤滑油などが燃えると、鉄でできた機械や乗り物は炎上するわけですから、まことにその通りです。「子どもには好奇心がある」ので、何にでも突撃すると考えておくべきだというのもまたその通りです。
著者は事故現場に必ず足を運んで事故を検証した上で本書をまとめています。珠玉の指摘に満ちています。世の中には「バカと専門家は細かいことを言いたがる」という大法則があり、その背後には「バカと専門家は細かいことが気になる」という法則があるという指摘(138頁)は低次元の議論を延々とやっている大学の教授会を彷彿とさせてくれます。
自分たちの大学の入学者数減少について、教授陣は根本的対策を取らないというよりは、取ることができない、あるいはそもそも入学者数減少の意味を理解できないということなのでしょう。そう言えば、大学にはバカな専門家というのや専門家のふりをしているバカなんかもいますが、これは単なるバカの部類ですから結局同じことですね。
(講談社2006年1600円+税)
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