薬師院仁志『日本とフランス 二つの民主主義 不平等か、不自由か』
かつてヨーロッパの知識人が共産主義と社会民主主義を、明確に区別しているのを知って、当時の日本共産党より過激な分子を抱えていた社会党とはどうやらずいぶん違うらしいと思ってはいましたが、この本を読むと、ヨーロッパの左派の来歴と、アメリカ経由でわが国の状況が奇妙にねじれた具合になっていることがはっきりわかりました。
ちなみに、わが国の社会党はベルリンの壁が崩壊するころ、英語の党名を「社会民主党」へとこっそりと変更していましたが、姑息な体質がよく現れていると思ったものです。当時の空気だけは読んだつもりになっていたのかもしれませんが、ルーマニアの党大会に参加してはチャウシェスク万歳を唱えたその年に、まさか革命が起こるとは思わなかったことでしょう。
著者が言うように、わが国には政治的左派による政策の選択肢が皆無であるということが一番の問題で、別におフランス礼賛の本ではありません。それにしても、平等主義的で、大きな国家思考でかつ愛国的なフランスが、あちらはあちらで悩める状況にあることもよくわかりました。
ところで、著者の専門が政治学ではなく社会学ということで、あ、こんなことも社会学者として言っていいんだと気づかされました。社会学という学問の新たな可能性を教えてくれたようにも思います。
(光文社新書2006年740円+税)

