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2007年5月20日 (日)

石井敏他編『異文化コミュニケーション・ハンドブック』

 授業準備のために読んだ本ですが、一応、読書日記なので、書いておきます。この種の問題に関心がない一般読者には薦められません。大学の教科書としては便利かもしれませんが、大勢の著者によるそれぞれ思索の足りない薄っぺらい記述が辞書的に並んでいます。ひょっとして業績作りのための本でしょうか。
 異文化コミュニケーションという分野は、アメリカ人が占領先の文化を理解しようとするつもりで作られているようで、実はこんな分野を作ることで、自分が勉強するのではなく、アメリカという異文化を他国人に理解してもらおうとするムシのいい分野のような気がします。学問として設定しておけば外国人が自分で勉強してくれるだろうという、なかなか賢い戦略なのではないかと、かんぐりたくなります。
 実際、この分野では、文化の違いはわかったとして、それからどうするのか、ということが問題なのです。この種の本の、異文化についての議論の行き着く先は多文化共存ということになるのは読まなくてもわかりますが、一方の否定の上に他方が成り立つような、イスラム教とキリスト教のような関係にある場合、相手を抹殺することが神の命令だと考える人も少なくありません。共存ということばが辞書に載っていないような文化においては、共存は不可能なのではないか、という問いかけもありうるはずです。
 さて、そうなってくるとわが日本文化の「無宗教」的ないい加減さにも改めて目を向ける必要が出てくるかもしれません。わが国民は、宗教戦争らしいものは経験したことがないという世にも珍しい歴史を有しているからです。もっとも、わが国は宗教的には一見寛容に見えて、実はキリスト教だけは毛嫌いする神道公理が支配する国なので、話はそう簡単ではありません。しかし、毛嫌いする程度ならまだましという考え方もあるので、宗教的寛容の哲学の可能性を探ってみる価値はありそうです

(有斐閣選書1997年1,900円+税)

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