野口旭『グローバル経済を学ぶ』
経済についての広く流布している誤った通念を、専門家のオーソドックスな立場から矯正してくれる本です。反グローバリズムの俗説に対する批判でもあります。リカルドの比較生産費説や貿易収支と経常収支の関係といったことがらが、教科書の中だけではなく、現実の経済現象の中で確認できるのが、いつもながら新鮮です。次の二つの引用だけからでも、俗説との違いがよくわかるのではないでしょうか。
「貿易によって衰退してしまうような国際的にみて効率の悪い産業=比較劣位産業が国内で縮小し、その代わりにより効率のよい産業=比較優位産業が拡大し、その比較優位財の輸出によって比較劣位財を海外からより安価に輸入できることこそが、まさに一国にとっての貿易利益である」(88頁)
「日本の経常収支が黒字になるのは、日本の居住者全体がその支出を所得以下に抑え海外への貯蓄供給=投資を行った結果であり、アメリカのそれが赤字になるのは、所得以上の支出を行って海外から借金をした結果なのです」(175-176頁)
これだけでは凝縮されすぎていて、わかりづらいかもしれませんが、そのときは、本書を読んでください。当然ですが、本書ではこれらのことが、もっと具体的かつわかりやすく述べられています。
ちなみに前著『経済対立は誰が起こすのか』(1998年ちくま新書)とは重なるところもありますが、そちらは絶版にして、本書がその続編またはタイムリーな改訂版として生まれ変わったようです。学生に勧めたい好著です。
(ちくま新書2007年720円+税)

