日下公人『国家ルネッサンス』
著者の知識量と発想の豊かさにはいつも感心させられます。古本屋でも未読のものを見つけると、つい買って読んでしまいます。本書もその一冊で、期待通りでした。
15年前に書かれた国家再生プログラムですが、今もって古くなっていないところが多く、それだけ、著者の提案が実現していないということかもしれません。それにしても、実現していたらなあと思わずにはいられない名案がたくさん披露されています。本書は雑誌に連載されたものを集めたこともあり、それぞれの章が凝縮されていて、読み応えがありました。
もっとも、1992年の段階で、アメリカの牛肉を2兆円分買い取って、当時肉が食べられないと噂されていたロシアに、「日本からのプレゼントです、とスタンプを押して配る」(57頁)なんて考えは面白すぎて誰もついて行けないかもしれません。しかし、注目すべきはこうしたアイデアを支えている著者の国家意識と外交センスだと思います。
また、かつてわが国の明治中期以前の給与所得者は納税していなかったということと、その彼らが納税をするようになったのは、明治中期に高級官僚が自分たちも無税では恥ずかしいと言って3%ほど納めるようにしたのが始まり(122頁)との話は、歴史的知識として知っておいて損はないと思います。
ちなみに、当時の高級官僚の給料は桁外れに高く、お手伝いさんが3人も置けたとのこと。戦時特別税として導入されて以来、今ではえらく取られるようになっていることがわかります。
いずれにしても、こういう話を聞くと、通念に凝り固まりがちな頭をほぐしてくれるような気がします。
(講談社1992年1400円)
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