香西秀信『議論術速成法—新しいトピカ』
議論で相手をやりこめる方法と実例が惜しまず開陳されているという、実戦向けレトリックの本です。レトリックでは議論が成立する場所をトポスと読んで、これを精密に体系化しようとしてきたようですが、面白いのは、そうやって体系化し、カタログのようにしてしまうと、実戦には使えないものとなってしまうというところです。著者はそこで、あまり面白くもなく体系化もされていないアリストテレスのトポスが、実は意外に役立つということを発見していて、「アリストテレスが意図的にあのようなトポスを揃えたと『誤解』して論をすすめるだけの話である」(78−79頁)と言っています。したがって、トポスを体系化し、整理して見せたキケロなどより、雑然と並べただけに見えるアリストテレスの方が「使える」ということになるというのはなかなか面白い事実です。
こうして、著者は、有効なトポスの具体例をともかく集めて見せてくれるのですが、その実例とそれを並べて見せる手際は実に鮮やかで、随所に差し挟まれている批判的なコメントも決まっています。そして、その結果として、本書は副題にあるように、新しいトピカ(トポス学)としても成立しています。というわけで、本書の構成自体がそもそも論争的な発想に支えられているようです。
ただし、確かに議論に役立つ本ですが、使い方を間違うと、ただ性格が悪い人というレッテルを貼られるだけになるかもしれませんので、ご使用の際にはくれぐれも注意が必要です。
(ちくま新書2000年680円+税)
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