ベルクソン『創造的進化』
ベルグソンは日々変化する現実世界の姿をとらえる名人です。現実を固定したものとして、同様に確立し固定した科学に当てはめるのなら莫迦でもできることで、世間で優秀とされる知性はしばしばこの楽な途を選んでしまいます。知性というものが、そもそも固定したものしかとらえられないからなのですが、そうすると、考えることが仕事のはずの人間の知性は、考えないことを目指していることになり、気がついてみたら生命も人格も凝り固まったヘンな生き物をつくってしまいます。
ベルグソンは科学を決して固定したものと考えてはいないので、本能や共感、霊魂や身体といった問題に取り組む際の柔軟な姿勢が見られます。その点では複雑系やカオスのような今日的な問題にも通用する思想だと思います。326頁以降の「無」についての考察も印象的でした。無について語ることが、かえってプラスαになっているというのは面白い着想です。このあたりはオーソドックスな哲学的技量も示しています。『時間と自由』もそうでしたが、全体に考えるヒントはちりばめられているものの、つかみ所のない感じのエッセーで、しかしながら、一冊に一カ所くらい、こういう記述もあります。同業者向けの記述かもしれませんが、読者としても多少議論の行方の見当がついて、ほっとさせられます。
(真方敬道訳岩波文庫1979年550円)
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