三浦佑之『古事記のひみつ 歴史書の成立』
以前読んだ歴史学者の岡田英弘の本では、当たり前のように古事記偽書説が唱えられていました。昔、神主の息子に個人的に古事記の読解レッスンをしたことがあって、その雑多でエネルギッシュな内容には驚かされたことがあります。それにもかかわらず、偽書だと断定されると、やはりそんなものかなあと思いながらも、違和感がくすぶっていました。その違和感をどうにかしたくて本書を読んでみたという次第ですが、期待以上にいろいろと腑に落ちました。
本書は古事記序文は偽りとしながら、偽書説はとっていません。むしろ古事記は日本書紀以前の様々な神話や民俗伝承の集積ととらえています。岡田説についても「何かの思い違いではないか」とあっさり釘が刺されています。
何よりも、古事記の非天皇中心的で、土俗の匂いのする魅力的な話の内容に注目すると、やはり偽書説はないだろうなと思います。本書の議論も土俗的・文学的な内容に注目していて説得力があります。「比喩の古層性」や「天津麻羅の象徴性」の章はその点でも示唆的です。特に後の章では、南方熊楠の読みの正確さと西郷信綱の鈍感さが対比されていて、こういう問題についてはさもありなん、という感じがしました。
(吉川弘文館2007年1,700円+税)
| 固定リンク
「書籍・雑誌」カテゴリの記事
- ドイツ語で読む珠玉の短編(2026.06.23)
- 山本七平『小林秀雄の流儀』(2019.07.28)
- 田中圭一『うつヌケ うつトンネルを抜けた人たち』(2017.02.20)
- 天外伺朗『宇宙の根っこにつながる生き方 そのしくみを知れば人生が変わる』(2017.02.19)
- 柴田昌治『「できる人」が会社を滅ぼす』(2016.12.30)
この記事へのコメントは終了しました。


コメント