香西秀信『論より詭弁 反論理的思考のすすめ』
「そんなのは詭弁だ!」と怒ってみても、そのときは実際、論争に負けているのです。本書は詭弁も有効な論理として認めていこうじゃないかという、ある意味では常識的で現実的な立場から書かれています。「どの面提げてそんなこと言えるんだ」というのは、論理学の世界では詭弁になるそうで、確かに論理を狭くとらえると、そういうことにもなるのでしょうが、やはり常識にはかなっていません。
「『米兵の死体映像を流したのはけしからん』という意見に対し『アメリカだって同じことをしたではないか』と応酬するのが詭弁になるのは、ただ論理学の教科書の中だけでのことにすぎない。」(137頁)
論理学を学ぶと議論に負けるようになるというのでは、学んだ甲斐がありません。また、非論理的な言いぐさの非論理性を見抜いた上で、非論理的な応酬も選択肢の一つとして採用することができるというのが、おそらく議論の必勝法ということになるのでしょう。著者の本はあと何冊か読んでみるつもりです。
ところで、本書で初めて知ったのですが、言語学者で、反戦運動でも著名なアメリカのチョムスキーが。かつて「ポル・ポトの大虐殺を否定し続け、進退窮まるとその責任はアメリカにあると強弁した」(99頁)というのは「へぇー」って感じです。でも、わかる気がします。平和主義者でも、平和を信仰の対象にすると、こんなことになりかねませんから。
(光文社新書2007年700円+税)
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