奥田英朗『町長選挙』
このシリーズは、いよいよ絶好調という感じです。4つの短編のうち最初の3つはそれぞれナベツネ(ナベマン)、ライブドアの元社長(アンポンマン)、女優の黒木瞳(白木カオル)が、いかにもという感じで出てきます。なんだかえらくリアリティーがあります。本当によく観察していますね。オチのところでほっとしたりじーんとさせられたりするところがあって、単なるパロディではありません。読後感はさわやかです。
最後の短編「町長選挙」は表題作だけあって、ちょっとこれまでとは違う世界につれていてくれます。日本人の選挙人類学とでも言ったらいいでしょうか。結末も意外ですが説得力のある展開になります。
この短編、三谷幸喜あたりが脚本・監督で映画にでもしてくれたら観てみたいものです。トリックスター伊良部医師には伊集院光あたりではどうでしょう。露出癖のある無愛想な看護婦のマユミには誰が良いかさっぱり見当がつきませんが、本作ではパンクロックのバンドでギターを弾いていることがわかったりするので、その存在は余計謎めいてきました。情けない医師を金だらいでどついたり、対立陣営同士の乱闘の巻き添えで鰤の頭を投げつけられては「おりゃー」とドロップキックをかましたりと、結構いい役回りです。『空中ブランコ』の最後の短編あたりからちょっと変わってきました。作中で成長してきたのかも。
それにしても、こんな小説を書けるなんて、すごいですね。作者としても楽しいんじゃないでしょうか。
(文藝春秋2006年1238円+税)

