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2008年5月30日 (金)

櫻井敬子『行政法のエッセンス』

 久しぶりに法学者の書いた本で、掛け値なく面白いものを読ませてもらいました。行政法の入門書としてはもちろん、専門家にとっても刺激的だと思います。法解釈学というものが、立法まで視野に入れた創造的な学問だということが強く意識されていて、思想的にも実にしっかりしています。法学部の1年生には行政法というタイトルにこだわらず、具体的な法学入門として読んでもらってもいいと思います。
 また、行政の現場の細かい情報がよく調べられていて、勉強になります。というか、感心させられました。千代田区の「ポイ捨て条例」が過料よりもその取り立て経費のほうがかさんでいるなんてことは、どうやって調べたんでしょう。
 それはともかく、著者が法律に関する森羅万象すべてに深甚な興味を持っていることがよくわかります。文章も闊達で、言いたいことが歯切れよくいいリズムで書かれています。法律書っぽくないところがいい感じです。
 しかし、内容的には論点の整理も見事で、判例や学説の評価が的確に示されています。本当に優秀な法律家というのはこんな人のことを言うのだろうなと思います。専門家にはこんな本を書いてもらいたかったという典型のような本です。脱帽です。
 というわけで、早速私の受け持つ学生たちにも一読を勧めておきました。ただ、うちの学生には、頭は悪くないのですが「訴訟」という漢字が読めないという、今まで勉強と無縁だった者もいますので、まだちょっと苦しいかもしれません。でも、本書をきっかけに勉強してくれたらいいんですけどねえ。

(学陽書房2007年2200円+税)

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2008年5月29日 (木)

本山博『超感覚的なものとその世界―宗教的経験の世界―』

 本書がユネスコ哲学部門優良推薦図書になっているのももっともです。著者がわが国であまり知られていないのは、わが国の状況が良くないからです。それでも最近はこの種の問題については多少なりとも理解者が増えてきているのではないかと思います。
 それはともかく、具体的に宗教的経験の世界がこれだけ具体的かつ何の奇を衒うでもなく淡々と理論的に述べられているのは、驚くべきことです。私にとっては未知の世界を案内してくれる本でもありますが、同時に、今までまともに考えずに放っておいた自分自身の非合理的超常的な経験を、無理に押さえ込む必要がないことにも気づかされ、ほっとさせられるところがあります。
 将来自分がヨガや座禅に取り組んで、その道を究めるといったことはたぶんないと思いますが、こうしたことを「わかっている」人がいるというだけでも、ありがたいことだと思います。いずれにしても、こうした問題について、今後とも自分の感性を閉じないようにしておくことが必要だろうと思います。

(平成2年宗教心理出版3000円)

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2008年5月28日 (水)

マッテオ・モッテルリーニ『経済は感情で動く―はじめての行動経済学』

 行動経済学の入門書として最適の一冊です。内容自体にはあまり新味はないのですが、これだけたくさんの設例、実験例が収録されている本は少なくとも邦訳書では他にないと思います。著者のこのサービス精神には脱帽です。例が多すぎてかえってそれぞれの印象が薄くなってしまうのが、あえていえば欠点かもしれません。
 ともかく、この実験例はしばしば社会科学系の授業の小ネタに使えるので重宝します。学生たちも喜んで取り組んでくれます。これを通じて、人間の非合理的な行動の不思議さ、面白さを見つめ直してくれればいいと思っています。
 著者は、人間が非合理的で「困ったことになるのは、私たちがものを知らないからではなくて、知らないのに知っているつもりでいるからだ」(314頁)と言っていますが、確かにその通りですね。会社の経営陣の判断の誤りなんかもほとんどこれでしょう。自分の限界を正直に認めることができない人は近くにもたくさんいます。それで、案の定馬鹿げた判断を懲りずに繰り返しています。やっぱ、天狗になっているのでしょうね。
 翻訳で気になったことを最後に述べておくと、ブラジルの著名なサッカー選手リバウドとロナウドがリバルドとロナルドという具合に表記されていますが、やはり前者の方が日本の読者には通りがいいのではないかと思います。

(泉典子訳紀伊國屋書店2008年1600円+税)

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2008年5月27日 (火)

本山博『スピリチュアリティの真実』

 へー、そうなんだ、という驚きの連続です。ヨガをもとにした瞑想や体操の具体的な方法まで書かれていて、至れり尽くせりです。あちらの世界には行けなくても健康には良さそうです。
 超能力や念力はともかく、著者は「神様のまねをして人を愛し、人のために働き、物のために働き、自然と共存できるようになり、魂の存在に気づいてくださったら、とてもありがたく思います」(227頁)と言いますが、そうですよね。この気持ちを忘れなければ、レベルの低い霊能者によってカルトに引き込まれることもなくなるでしょう。
 それはそうと、この本の体操をちょっとやってみたら、先週来の腰の痛みがすーっとひきました。痛みの90%があっいう間にどこかに行ってしまいました。確かに不思議ですね。しばらく続けてみましょう。

(PHP研究所2008年1,500円+税)

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2008年5月25日 (日)

若林亜紀『公務員の異常な世界』

 公務員の生態がきっちりと細部に至るまで取材され、調べられています。で、想像以上に驚かされました。著者自身昔公務員だったことがあるので、体験にも裏打ちされていて、説得力があります。
 それにしても練馬区の「みどりのおばさん」が年収800万円とはねー。田舎の短大の50才の教員より上ですね。名古屋市交通局の掃除のおばちゃんが、退職金を5000万円もらうという話を聞いたのはかなり昔のことですが、あれは本当だったんですね。
 かつて養老孟司氏が東大教授の給料の安さを嘆いていましたが、確かに、国家公務員の給料は規模の大きい自治体の公務員のそれよりは安いようです。大阪市の清掃のおじさんが1000万円だと聞いたらやはり心穏やかではなかったでしょう。神戸市のバスの運転手なんか1300万円です。実際、これだけもらっていれば、平均寿命も民間会社の勤め人より公務員のほうが長いそうです。
 ま、人の給料はどうでもいいのですが、国庫や自治体のお金も無尽蔵にあるわけではないので、このまんまだと日本がどんどん傾くのではないかと心配になります。それから、文科省からの天下り職員が私立大学の財政のことを考えようともしないのは、実は、長年の習性だということがわかりました。こんな生活しとっちゃ無理だわなー。そんなとこに目が行くわけがないですもんね。

(幻冬舎新書2008年740円+税)

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2008年5月22日 (木)

長谷川慶太郎『中国「反日」の末路』

 著者の言っていることは、たとえば9・11テロのように、数年後に実現することがあるので、たまたま古本屋で見つけた本書を読んでみました。いつもながら、軍事情報については本当に詳しい人なので、いろいろと感心させられました。旧ソ連や北朝鮮の情報も貴重です。
 本書では中国全土をイントラネットにしているインターネット情報管理体制が携帯電話の普及により、本書刊行の2005年当時すでにほころびを見せていることが指摘されています。重慶の反日デモでは、警察官の銃に銃弾が込められていないという情報がデモ隊にあっという間に拡がって、警察官が殴る蹴るの暴行を受け、1万人の暴徒を4万7千人の警察官でも抑えられなかったという事態を生み出しました。
 先日の長野や早稲田大学でも、日本の警察官は中国人を逮捕しないという情報が(デマではなく事実でしたが)おそらくあっという間に拡がったのでしょう。かなりの日本人がボコられて、中国人への恨みが蓄積していますが、それはそれとして、この情報の素早さは間違いなく携帯電話ネットワークによるものでしょうね。
 今は日本人やチベット人を殴って意気揚々得意満面な彼ら彼女らが将来中国に帰国したときどのように行動するのかは、いずれわかることになるでしょう。この事態を一番恐れているのは中国共産党だろうと思います。
 今回の大地震が暴動の引き金にならないといいのですが、どうでしょう。

(東洋経済新報社2005年1500円+税)

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2008年5月19日 (月)

養老孟司『涼しい脳味噌』

 著者の初期のエッセー集です。文と文の間に飛躍があって、ちょっと考えないとわからないところがあるのですが、それに慣れてくるとかえってこの飛躍が快感で、病みつきになります。
 例によって様々な話題に触れていますが、著者が51歳当時、東大教授で年収1000万円もらっていなかったというのは、へーって感じです。天下の東大なのにねえ。でもまあ国家公務員ならこんなものでしょう。それでもうちのような短大よりはるかにいいですが、著者としては、大手私大と比べると安い気がするのでしょう。もっとも、大手都市銀行なら三十歳になる前にそれくらいもらっていることは珍しくないので、やっぱり安いのかもしれません。
 それはともかく、本書では後半に本の話題が出てくるところは参考になりました。著者のお勧めを読んでみようかという気にさせられます。なお、スティーブン・キングが「執筆中に、自分でも怖くなって、座っている椅子から動けなくなる」(238頁)というのは面白い話です。『シャイニング』なんか映画でしか観ていませんが、読むともっと怖そうです。いつか読んでみます。

(文春文庫1995年476円+税)

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2008年5月15日 (木)

本山博・渡部昇一『霊の研究 人生の探究』

 霊能者として著名な本山博氏に、神秘体験が全くないという渡部昇一氏がインタビューしてできた本です。ふーん、あちら側の世界はそんなふうになっているのかと、信じる人は救われることでしょう。江原啓之の言うところの霊の世界とも重なっているので、見える人には見えるのでしょうね。
 ただ、霊の存在は科学的には確かめられませんし、見えないからといって、これを確かめようとして死後の世界に足を踏み入れるわけにも行きませんので、渡部氏は霊というものを、それなしではものが考えられない「公準」として認めるという立場をとっています。これはこれで納得のいく対処法です。
 結局は生きている人は、世のため人のために仕事を成就させることで霊的成長を遂げなければならないのはその通りですが、世のため人のためかはさしあたり考えず、物事に我を忘れて一心不乱に打ち込めば、結局は同じことになるという指摘は新鮮な気がしました。
 本山氏曰く。「霊的な成長をするための一番の方法は、自分が好きなことを一所懸命にやって、そのものと一体化することですね。いつでも主客合一になった状態になれる人は、どんどん霊的に成長できると思います」(221頁)。自分をなくすことがポイントだというのは、その通りでしょう。禅やスーフィズムなどにも通じています。ともかく自分ももっと「修行」しなくちゃと思います。

(平成19年1429円+税)

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2008年5月14日 (水)

谷沢永一『官僚、もういいかげんにせんかい』

 キワモノっぽいタイトルの割に、中身はマニアックなほどしっかりと文献をふまえた労作になっています。かなり丹念に日本史をたどってくれていて、とりわけ明治時代以降の官僚たちの跳梁跋扈ぶりが見事に活写されています。教科書なんかには決して載っていないえげつない話が満載です。
 こうやって読んでみると、行政改革なんてものは到底不可能だろうなと思われてきます。でも、最近は官僚の悪事が結構バレるようになってきているので、逆に考えると、少し光が見えてきているのかもしれません。
 天下りのえげつない官僚なら身近にも少なからずいるので、本書に書いてあることは、実にもっともだと思います。ほんと、いいかげんにしてほしいものです。しかし、このごろはわが国全体が官僚化しているので、官僚批判はもはや日本人全体に当てはまるような気がします。ちゃんとした人間が稀少になってきています。あー、情けない。

(講談社平成14年1500円税別)

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2008年5月13日 (火)

新藤宗幸『行政ってなんだろう』

 青少年向けの啓蒙書ですが、実にきっちりと書かれています。役人に対する静かな怒りも込められていて、読み応えがあります。著者がテレビで不愉快そうな表情をしてコメントしているのを見たことがありますが、見たまんまの印象です。
 それにしても大学生がこれくらいの内容を入学前に押さえてくれていれば、講義は楽でしょうね。いわゆる縦割り行政の矛盾と弊害の実例などが具体的に示されていて勉強になりました。理解を助ける図版も充実しています。良い本です。古書店で入手しましたが、新版が出ていたら、買って手元に置いておこうと思います。同著者の専門書も読んでみるつもりです。

(岩波ジュニア新書1998年740円+税)

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内田樹『女は何を欲望するか』

 フェミニズムを原理的に検討した本です。ただ、私はフェミニズムが元気が良かったときに3年ほど留学していたので、当時の情報がすっぽりと抜け落ちています。話題についてはどことなく歴史書を読んでいるような感じがしました。
 第1部のフェミニズム言語論は、理論的にいろいろと参考になりました。前にも書きましたが、ラカンの言っていることが、著者の解釈で腑に落ちるところが多々あり、こりゃ読まなきゃと思いながらまだ読んではいませんが、勉強になります。特に言語がそもそも「本当に言いたいこと」が言えない構造の内にあり、だからこそ他者に向けて、他者に代わって語るのだという指摘(124頁)は、法について考えるときにも当てはまりそうです。今書いている原稿に関係しているので、ラッキーでした。
 第2部のフェミニズム映画論は「エイリアン」シリーズの見事な分析で、映画が精神分析的な材料になるなんて、こうして論じられてみるまで気がつきませんでした。思えばハリウッド映画のような商業主義的大衆娯楽映画こそ、人々の様々な欲求が投影していると考えられますもんね。同シリーズからアメリカのフェミニズムと反フェミニズム感情の相克がみてとれると言われると、そんな気がします。
 ただ、だからといって個人的にはハリウッド映画のみならず映画自体あまり好きではありません。昔は毎日のように観ていた時期もありますが、役者が舞台に立ってくれる演劇の方がはるかにいいと思うのは、師匠の影響かもしれません。そう言えば留学中は毎晩のように演劇三昧でしたね。今から思うと夢のようです。
 と、こんなことを昨夜書いてアップしようとしたらうまくいかず、文章も失われてしまいました。残念でしたが、アレンジして書き直しました。今後は一度テキストファイルにしておいて、移すようにした方がいいかもしれませんね。

(角川書店2008年705円税別)

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2008年5月11日 (日)

井上茂『法の根底にあるもの』

 法の根底にあるものは政治ではなく、自律した法体系であり、その根本法をかの「十七条憲法」に求めたユニークな本です。本書を読むのは二度目ですが、市民講座で日本の思想について話をすることになったので、その準備も兼ねて読みました。
 著者は体系的な思考をする人なので、本はわかりやすく読みやすいのですが、体系が完結しているのがかえって、身動きをできなくしていて窮屈なところがあります。問題としては面白いはずなのに、妙に退屈なのです。
 というわけで、二度目の読書も退屈だったのですが、さすがにそうなると、なぜだか考えないわけにはいきません。思うに、法的正義の中心は虚焦点というか、蜃気楼のようなところがあって、体系論理的に追えば追うほど視界の彼方に遠ざかるようにできているのではないでしょうか。そして、言語というものがそもそもそういう「言い足りなさ」を宿命的に抱えているものなので、何を言うにつけても、そんなことになるのです。
 著者は法哲学プロパーの人ですが、ヘーゲルの疎外論やフロイトやラカンの議論とは無縁のようで、そうした体系や言語をめぐる問題が視界に入ってこないのでしょう。実は今も法哲学会はあまりそうした議論が得意ではないようです。大事な問題だと思うのですが。ま、私が今書いている本には活かしたいと思います。

(有斐閣1989年1700円)

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2008年5月 6日 (火)

高木光『ライブ行政法〈中級編〉補訂版』

 行政法を教えている関係で、本書も初級編に続いて読み直しました。最近ネット上の書店で補訂版があるのを見て入手しようと思っていたのですが、自分の本棚をよく見てみると「補訂版」とありました。1995年に出ている古い補訂版ですが、そのまま新しい版は出ていないようです。早まって買わなくてよかった。
 近年は行政事件訴訟法を含め、かなり大幅な法改正がなされていますので、内容的には古い部分もありますが、やっぱり良い本です。法律の基本的な考え方がきっちりと示されているところが、行政法に限らず、法学入門としてもよくできています。これを初級編とともに読み終えると、報道される行政訴訟についての理解が進むこと請け合いです。
 そもそも行政事件訴訟法の改正は著者の主張通りになされたもので、学者が立法に影響を与えるのはかなりまれなことなのですが、それだけ力のある人だということです。そのあたりも念頭に置いて行政事件訴訟法についての記述を読むのも一興です。
 全体に著者の学問に対する謙虚で誠実な姿勢が伝わってくる本です。本書の改訂版を出してもらえるとありがたいですね。演習書も書いてほしいです。

(有斐閣1995年1,854円)

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2008年5月 5日 (月)

中山治『「格差突破力」をつける方法 — 勉強法から人生戦略まで』

 普通の人のための身の丈にあった幸福を追求するための、きわめて具体的な指南書です。確かに誰でも一流スポーツ選手や一流芸能人になれるわけではありません。著者は今後のわが国が衰退の方向に向かっているとの判断に立って、具体的に何をすればよいかということをきっちりと書いています。
 まずとりたてて自分の向き不向きがわからない人は、サラリーマンを目指すといいとあります。会社の仕事は何よりプロとアマの格差が少ないからです。そうですね、確かに。いくら差があるといっても、スポーツや芸術の世界のそれとは違いますもんね。
 そして、優れた書物と人物と芸術から良質の情報を得て、それをもとに自分の頭で考えることが大切だと言います。英語の力もこれからの時代には不可欠だとして、具体的に参考書まで示してくれています(『Re-Start』と『ALL IN ONE』がそれです。探してみます)。
 最後に外貨預金やヘッジファンドなどの特徴をつかみながら、安全保障としての資産管理も説かれています。外国の銀行への預金は、わが国に万が一のことが起こったときには本当に安全保障になるという指摘があり、変に貯蓄型の生命保険なんかに入るよりは、もう少しいろいろと考えてみようかという気にさせられました。
 著者は、わが国の現状については徹底して悲観的ですが、利権談合官僚主義体質をしっかり見ている人なので、単純な反体制的批判でおしまいというわけではありません。しっかり考え抜いているからこそ、これだけ具体的な人生戦略の提案ができるのだろうと思います。参考になりました。

(洋泉社2007年780円+税)
 

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2008年5月 4日 (日)

養老孟司『唯脳論』

 著者の主張のエッセンスが詰まった本です。結局、人間およびその人間たちの集まった社会というものの不思議さは、脳の働きとしか言えないようなことばかりで、さらにその脳自体は結構単純な構造をした一種の臓器なのだから、唯脳論というのは還元主義とか科学主義というものでもありません。
 人間の不思議さに向き合うと、これしか言いようがなくなるというのが唯脳論なんですね。わからないものはわからないけれど、とりあえず脳のはたらきだ、ということです。
 構造と機能は別次元の問題で、構造から機能が出てこないからといって騒ぐ必要はないのは、心臓から「循環」を取り出すことができないのと同じだという指摘(30頁)は実にスッキリしています。むしろ著者は構造と機能とに分けて考える人間の脳の特徴自体に関心を寄せます。
 著者のいわゆる「脳化社会」という見方も本書が最初かと思われますが、現代文明というのはまさしく脳の指令通りの社会をつくってきたと言えます。脳自体が自らの身体性=自然を無視しながらここまで来たのですから、ときどきわが身の中の自然が暴れ出して困るわけです。

(ちくま学芸文庫880円+税)

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長谷川健志監修『DVD上達レッスン バスケットボール』

 最近はこの手の本はDVDが付録になっていて、本当にわかりやすくなりました。しかも安価です。いい時代になったものです。
 監修者の長谷川健志氏は青山学院大学の監督で、昨年は大学選手権を取りました。基本に忠実でよく走るバスケットを志向しています。昨年のユニバーシアードでは日本代表の監督も務め、何と4位入賞です。ただ、わが国でほとんど話題に上らなかったのは残念でした。
 実は最近のわが国のバスケットボール界には才能ある選手たちが次々と揃ってきています。一昨年の大学選手権は準決勝二試合を観戦しましたが、そのときの各校の代表選手がユニバーシアードの主力でした。たまたまですが良い選手を生で見ることができたのは幸運でした。この選手たちならやるだろうなって感じです。
 本書の付録のDVDにも岡田選手が出ています。青山学院大学バスケットボール部の選手たちが登場しますが、大学バスケットボールのコアなファンには別の意味でこたえられない本かもしれません。
 それはそれとして、あたりまえですが、選手たちは大変しっかりした技術を披露してくれています。小中学生のお手本にうってつけです。シュート、パス、ドリブルの基本がしっかりわかります。ただ、ディフェンスについては載っていませんので、佐古賢一監修の類書を併せて参考にするといいでしょう。
 今後のわが国のバスケットボールの技術水準の向上に貢献してくれる本です。

(成美堂出版2007年1500円+税)

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