櫻井敬子『行政法のエッセンス』
久しぶりに法学者の書いた本で、掛け値なく面白いものを読ませてもらいました。行政法の入門書としてはもちろん、専門家にとっても刺激的だと思います。法解釈学というものが、立法まで視野に入れた創造的な学問だということが強く意識されていて、思想的にも実にしっかりしています。法学部の1年生には行政法というタイトルにこだわらず、具体的な法学入門として読んでもらってもいいと思います。
また、行政の現場の細かい情報がよく調べられていて、勉強になります。というか、感心させられました。千代田区の「ポイ捨て条例」が過料よりもその取り立て経費のほうがかさんでいるなんてことは、どうやって調べたんでしょう。
それはともかく、著者が法律に関する森羅万象すべてに深甚な興味を持っていることがよくわかります。文章も闊達で、言いたいことが歯切れよくいいリズムで書かれています。法律書っぽくないところがいい感じです。
しかし、内容的には論点の整理も見事で、判例や学説の評価が的確に示されています。本当に優秀な法律家というのはこんな人のことを言うのだろうなと思います。専門家にはこんな本を書いてもらいたかったという典型のような本です。脱帽です。
というわけで、早速私の受け持つ学生たちにも一読を勧めておきました。ただ、うちの学生には、頭は悪くないのですが「訴訟」という漢字が読めないという、今まで勉強と無縁だった者もいますので、まだちょっと苦しいかもしれません。でも、本書をきっかけに勉強してくれたらいいんですけどねえ。
(学陽書房2007年2200円+税)

