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2008年5月11日 (日)

井上茂『法の根底にあるもの』

 法の根底にあるものは政治ではなく、自律した法体系であり、その根本法をかの「十七条憲法」に求めたユニークな本です。本書を読むのは二度目ですが、市民講座で日本の思想について話をすることになったので、その準備も兼ねて読みました。
 著者は体系的な思考をする人なので、本はわかりやすく読みやすいのですが、体系が完結しているのがかえって、身動きをできなくしていて窮屈なところがあります。問題としては面白いはずなのに、妙に退屈なのです。
 というわけで、二度目の読書も退屈だったのですが、さすがにそうなると、なぜだか考えないわけにはいきません。思うに、法的正義の中心は虚焦点というか、蜃気楼のようなところがあって、体系論理的に追えば追うほど視界の彼方に遠ざかるようにできているのではないでしょうか。そして、言語というものがそもそもそういう「言い足りなさ」を宿命的に抱えているものなので、何を言うにつけても、そんなことになるのです。
 著者は法哲学プロパーの人ですが、ヘーゲルの疎外論やフロイトやラカンの議論とは無縁のようで、そうした体系や言語をめぐる問題が視界に入ってこないのでしょう。実は今も法哲学会はあまりそうした議論が得意ではないようです。大事な問題だと思うのですが。ま、私が今書いている本には活かしたいと思います。

(有斐閣1989年1700円)

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