青木新門『納棺夫日記 増補改訂版』
人を棺に納める葬儀屋さんの自伝的省察。その省察は深く、かつ暖かいものです。多くの人の亡きがらと向かい合ってきた人だけに、死について考えざるをえなかったのでしょう。この職業にもなかば偶然にたどりついた感じですが、こういう本を書くために死者に導かれたのかもしれません。親鸞聖人を実感として理解している希有な人です。
死と隣り合わせにいたことのある人には、あらゆるものが光り輝いてみえるようで、さらにそこに、感謝の気持ちがわき上がってくるようです。これが南無阿弥陀仏と理解できるというか、実感できるものなのですね。
ちなみに私は最近、腹黒いことをしている人から黒い影が立ち上っているのが見え(るような気がし)ます。「わ、黒っ!」という感じです。ただし、自分が善人だと信じている困ったちゃんは黒くは見えないので、大したものではありませんが(顔の前のあたりが劣等複合意識でくすんでいるようには見えます)、もっと美しいものを見たいものです。しかし、美しい光が見えたときは、お迎えが近いのかもしれません。
(文春文庫1996年438円+税)

