日下公人『グローバルスタンダードと日本の「ものさし」―責任の取り方に見る文化の異相』
これは少し古い本ですが、内容は古くなっていません。相変わらず感心させられます。わが国に不足しているのは「独立自尊と自己責任の精神である」(231頁)というのはもっともな指摘で、そういえば明治時代の指導者たちはさすがに元武士だっただけあって、しっかりしていたようですが、今や一億総木っ端役人化社会なので、このていたらくなのでしょう。
著者のすごいところは、その原因の一つを1945年の敗戦の責任をとって当時の天皇が退位しなかったことに求めているところです。このことによって日本人の判断の「ものさし」が狂ってしまったと著者はみています。確かに私の両親から聞いたところでは、当時の人びとの間には「なぜ退位されないのか」という声も少なからず聞かれたそうです。
命令を下す地位にある人が責任をとらずに、下に責任だけを押しつけるようなら、官僚制度から社会全体にまで、そのモラル崩壊の影響は波及することになります。相対的に下の人たちに権限が移行するという点では民主的になったところもあるのですが「日本社会のあらゆる分野の中枢管理機能がモラルを失い、善悪を判断する『ものさし』も失ってしまったことは大きなマイナスである」(36頁)と著者は言います。 最近の官僚や会社組織の不始末に見られる「ばれなきゃいい」という考えの根っこはこのあたりにあるわけですね。
この点では阪神の岡田監督はいい辞め方をしました。頭のいい人なのでしょう。
(光文社2001年848円+税)
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