« カール・マルクス『ユダヤ人問題によせて ヘーゲル法哲学批判序説』 | トップページ | 美輪明宏『霊ナァンテコワクナイヨー』 »

2008年11月24日 (月)

川又一英『ビザンティン・ロシア 思索の旅』

 通信教育部の学生さんからいただいた本です。通信教育部は社会人が多く、通学部とは違ってユニークで面白くチャーミングな学生さんが多いので、スクーリング授業はいつも楽しみです。一般市民向けの講座や講演もそうですが、いろいろな経験を積まれた学生さんが来られるので、むしろこちらが教わることが多いくらいです。
 本書の著者はその学生さんのお友達だった方で、もうお亡くなりになっていますが、ああ、この学生さんのお友達ならちゃんとしているだろうと思った通り、浮ついたところのないしっかりした内容の本でした。
 まあ、私が不勉強だったのですが、著者は他にも何冊もビザンチン文化についての本を出されていました。これからおいおい読んでいこうと思います。
 今まで私自身、東方正教会については高橋保行さんの本を通じてくらいの知識しかなく、ドーソンなんかのカトリックの立場から見た正教観にいつの間にか影響を受けていたようです。
 本書を読んで、印象的だったのは、「常に原罪と裁きを想起し、神に近づこうとする西方カトリック教会の志向に対して、ひたすら祈り、憐れみを乞うことによって神の愛を得ようとする、東方正教会の姿」(44頁)です。
 こういう真摯な姿勢は妙好人のようで好きです。少し身近に感じることができました。
 本書は紀行文ですが、歴史の解説もきっちりと折り込んであり、大変勉強になります。最近仕事で関わっているロシア史についても参考になりました。どこも面白そうで行ってみたくなります。

 ところで、本書を読みながら、学生時代のフランスご購読の授業で、飯島耕一先生からリラダンの『残酷物語』の中の「ヴェラ」を教わったことを思い出しました。さすがに天才的な作家だけあって、単に異国趣味に終わるのではなく、正教の雰囲気をうまく捉えていたように思います。しかし、記憶の中で印象も変質しているかも知れません。今読み返してみるとどうでしょう。
 その飯島先生ですが、年末のコンパのとき、「ヴェラ」を読んだことを、その年一番のよい出来事と言っていいくらいだとおっしゃっていました。ほとんどご自身が一人でフランス語を訳されていたような授業でしたが、そういう感想を述べられるとはさすがに詩人だなと、当時の私はそちらのほうに感心させられていた記憶があります。もっとも、それほど魅力のある短編だったのでしょうね。

(山川出版社2002年2800円税別)

|

« カール・マルクス『ユダヤ人問題によせて ヘーゲル法哲学批判序説』 | トップページ | 美輪明宏『霊ナァンテコワクナイヨー』 »

書籍・雑誌」カテゴリの記事

コメント

この記事へのコメントは終了しました。