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2008年12月20日 (土)

吉本隆明『僕ならこう考える―こころを癒す5つのヒント』

 吉本隆明流人生相談みたいな本です。全編良い感じの空気が流れています。副題に「こころを癒す」とあるのもうなずけます。こういう普通のおじさん的なところは親しみがわきます。読んでいくうちに本書を読むのが二度目だったことに気がつきましたが、えい、ままよと読んでしまいました。
 本書では著者が編集者から投げかけられる質問に、かなり苦心して答えていることが分かりますが、そこがなかなか面白いところです。しばしばほとんど根拠の無いようなアイデアが開陳されていて、それが新鮮です。ファンにとってはこたえられない魅力的な本に仕上がっています。
 人間の性格は1才までの親子関係によって決まってくるなんてのは、著者本人には確信があっても、一般的な説得力はないかもしれません。でも、それでいいような気がしてくるのが吉本流です。もともと直感の人ですから、論理を素っ飛ばすところがありますが、ここまで飛ばすといっそ快感です。
 下部構造が上部構造を規定するというマルクスの考え方は、マルクスが晩年になって体がいうことをきかなくなったことから思いついたことなのではないかという推測(182頁)などは、面白いと思います。
 いずれにしても、こういう人生相談的なことに答えることで、著者の思想がマルクスとフロイトをもとに組み立てられていることがよく分かります。なお、フロイトについては三浦つとむによる唯物論的なフロイト読みの影響が感じられます。その三浦つとむについても言及されていますが、昔結構読んだ記憶がよみがえってきて懐かしかったです。今読み返す気はしませんが、ユニークな唯物論者でした。
 本書で紹介されている太宰の『津軽』は読んでみたくなりました。きょうび文庫で手に入りますかね。

(青春出版社1997年1400円+税)

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