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2008年12月 3日 (水)

細野真宏『細野真宏の数学嫌いでも「数学的思考力」が飛躍的に身につく本!』

 著者の言う数学的思考には、論理的思考に加えて論理の罠に落ち込まない自己反省能力が含まれています。物事を様々な方向から多角的に理解することができるというのは、確かにこうしたことなのでしょう。その点で、学校時代に数学が得意だったという思い出だけにすがりつつひたすら独善的な理屈をこねくりまわして譲らないというタイプがときどきいますが、著者はその対極にいる人です。
 本書で特に印象的だったのは、「分かる」とは「伝えられる」ことと同じだという指摘です。相手が「分かる」ためには、相手がそれを「伝えられる」という状態にする必要があるという指摘(66頁)は多くのことを示唆してくれます。別の言い方では、「情報を正確に伝える」というのは、究極的には「同じ絵」が描けるようにすること(172頁)ともあります。
 教壇に立つ身としては実に参考になります。複雑なことをかろうじて分かってもらってもその場限りである一方で、「今日先生がこんなこと言ってたよ」と子どもが親に話すことがあれば、授業は成功でしょう。
 畑中洋太郎さんの本もそうですが、著者のように、こうして頭の中の出来事をきれいに整理してくれると、理解や意思伝達という問題については、ウィトゲンシュタインなんかを読まなくても十分哲学的だという気がします。
 ところで著者の本でいつもおなじみのかわいらしいイラストは著者自身が描いたものだったんですね。本書で初めて気がつきました。器用な人ですね。

(小学館2008年1200円+税)

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