日下公人『教育の正体―国家戦略としての教育改革とは?』
本書も傑作でした。著者独特の、柄のないところに柄を付けながらも正論としか言いようのない議論が繰り広げられています。以前から教育権はまず親にあって、国にはなかったとは主張されていましたが、ここでもその路線で歴史的な事実を押さえつつ、根本的な考察がなされています。
印象的だったのは、著者の年代の男性は「美人を追いかけるな」と言われて育ってきたというくだりで、「美人を追いかけるような男は三流だと、子供のときから言われてきた」(65頁)とあります。きょうび世の中は美人礼賛ですので、こんなことがあったのかと新鮮に感じました。著者によれば、
「美人不美人や賢愚より、女は愛嬌、男は度胸という価値観を、日本列島の上につくり上げたのは成功だった。万民が幸福に暮らせる。ところがそういうものはみな封建的だと否定してしまったあとに来たのは何か。学校差別や容姿差別である」(同頁)
とあります。なるほどそうかも。「男は度胸」のほうは意識しないでもなかったですが、「女は愛嬌」については、私が男だからか、あまり考えたことがありませんでした。しかし、これにも深い意味があったわけですね。
本書所収の米長邦雄との対談も読みごたえがありました。その中で米長さんは、いわゆる振り込め詐欺の総額が200億円くらいになるなら、その背後に、裏で親などがこっそりもみ消した「もみ消し詐欺」の額はもっと途方もない額になるだろうと述べています(98頁)。
「息子や娘が何を言っても『自分で責任をとれ』と言い切る度胸を持とうではないか。それから、金を借りるならとにかく顔を見せなさい、ときちんと言おうではないか。この運動さえ行き渡れば、詐欺はなくなりますよ」と言います(同頁)。鋭い指摘だと思います。
(KKベストセラーズ2008年1560円+税)
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