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2008年12月10日 (水)

鈴木大拙『禅学入門』

 元々外国人のために英語で書かれた禅の入門書です。禅の公案の紹介など興味深いものがありますし、本来のインド産の禅那と禅との違いについても触れられていて、禅は幻想に浸っているのではなく、もっと日常に即した、ある意味で冷めた普通の境地だということが説かれていて、なるほどと思わされます。これは学者にとってはどうやら納得のいかないことのようですが、この辺のところがいかにも大拙らしいところです。
 ただ、いくら禅が説明できない境地だからといっても、後年の著者の『日本的霊性』のようにもう少し具体的に説明してくれたらありがたいのにとも感じました。おそらくこれを英語で読んだ外国人は、結局分からずじまいではなかったかと思われます。だからといって気軽に日本に来て修行するわけにもいかないでしょうから、ある意味で罪作りな本だったかもしれません。
 でもまあ、異文化に対する憧れというものは、多少なりともそんなものでしょう。そういえば、昔読んだ小田実の『何でも見てやろう』の中に、アメリカに渡った若き日の小田実が、ダンスをしないのかとか、執筆しないのかと聞かれていちいち答えるのが面倒くさい状況を切り抜けるのに「これは禅だ」と言って周囲を納得させてしまうくだりあって面白かったのを覚えています。そんなことができたのも、思えば鈴木大拙が書いたこの英語の入門書おかげだったかもしれません。
 最近は日本文化で海外に発信しているものといえば漫画やアニメですが、永平寺に参禅に来るよりは秋葉原に来てコスプレに興じる外国人のほうが圧倒的多数です。はたしてこれが世界を席巻すると、禅以上の思想的影響を与えることになるかもしれません。それは決してみんなでアホになるようなものではないと思います。

(講談社学術文庫2004年840円+税)

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