渡部昇一『生きがい』
年末年始と仕事に追われてなかなか更新できませんでしたが、何とか一段落といったところです。しばしば電車の中でこの原稿を書いているのですが、他の締め切りに追われると、どうしても滞りがちになります。
本を読むのも原稿を書くのも往復4時間の通勤電車の中なので、休みが続くとこれまた更新が滞るという具合です。本当は個室の研究室にこもってこういう作業ができるような環境だといいのですが、まあ、教務事務に日々明け暮れる「名ばかり教員」なので、これについてはあきらめています。
しかし、何はともあれ無事年も明け、冬休みも終わりましたので、これからぼちぼち更新していきます。
さて、本書ですが、1972年の本で、講談社の学術文庫版でも出されていた『「人間らしさ」の構造』の改題版でした。私は18歳のときにこれを読んだ記憶がありますから、ずいぶん久しぶりです。その後ずいぶん著者の本を読みましたが、今にして思えば本書は著者が後の著書で展開したさまざまなメッセージがいろいろと凝縮されて入っています。ちょっと間違うと優生学的な議論になりそうな危なっかしい議論がところどころ登場します。危なっかしいではすまなかった大西巨人との議論が思い起こされます。フェミニズムからの突っ込みどころも満載でしょうけれど、その筋の人はほとんどあきれて相手にしていないのかもしれません。
この点で、ドイツ文化の影響を受けた人がばしば人種や優生学を理由にしたとんでもないことを口走るような気がするのは、私の思い込みかもしれませんが、どうでしょうか。
本書では自分の内面の声に耳を傾けて、周りの世界に左右されない創造的な人生を送る方法と助言、そしてさまざまな先人のエピソードが満載です。何せ古今東西の本を読み漁っている人ですから、それはそれとしてなかなか興味深い話がありました。
その中でも、自分の内面の価値基準に従って人生を送る人にとっては、性格の構造がデモクラティックになるというのは、面白い指摘だと思いました。著者は近代的デモクラシーがイギリスのジェントルマンを中心に発達してきたという史実を指摘していますが、なるほどそういう見方にも一理ありそうです。
(ワック株式会社2004年905円+税)
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