日下公人・高山正之『日本はどれほどいい国か 何度でも言う、「世界は腹黒い」』
この二人の対談ですから、思った通り、お互いの主張を補強し合うような盛り上がりを見せています。この手の対談本はふつうしゃべったままではなくて、かなり後から手を入れるものですが、本書は目一杯書き込まれていて、資料としても貴重な記述が随所に見られます。
かのアウンサン・スーチーの支持勢力が華僑とインド系、およびその原因を作った英米で、みんなミャンマーに対する既得権益を手放そうとしていないという構造は本書ではっきりわかりました。このあたりの事情は日本の新聞を読んでいる限りは絶対にわからないと思います。
それにしても両者とも国際情勢と戦争の歴史に詳しいのに感心させられます。その情報源にも興味があります。言及されているものについては今後、できる限りフォローしてみたいと思います。翻訳のないものも結構ありそうです。
ところで、この対談では日下公人氏がクリスチャンだったことを初めて知りました。対談ならではですね。もちろん日下氏だからこそ、若いときから西洋世界の略奪的性格を見抜いていたのでしょう。むしろ相手の懐に飛び込んで、もっと普遍的なことを考えてきたのだろうと思います。
ほかに印象的だったのは、アメリカやオーストラリアの原住民に対する差別や虐待の歴史で、さらには現在もその酷さが継続していることがわかります。また、メキシコのメスチソの母たちは子供とは引き離されて生涯奴隷のままだったそうで、本当に文字通り人間扱いされていなかったのですね。
世界は腹黒いというのが常識であり、それを忘れているか、見てみないふりをするのが今日のわが国民のようですが、やはり、世界が腹黒いのを承知の上で無償の善行を施して初めて世界中から畏敬の念をもって見られることになるのでしょう。今は子どもっぽい単純なお人好しですが、立派な大人になる可能性もまたあるような気がしてくる本です。
それにつけても、この方向でわが国が成熟するための最大の障害は役人とインテリではないかと思います。役所や大学だけでなく、民間企業でもこういうタイプの人間がどんどん増えているような気がします。見分けるのは簡単で、彼らは揃いも揃って口舌の徒だという点で共通しています。そして彼らは、何はさておき自己の責任だけは決して取ろうとしません。そうだ、こいつらは腹黒いのでした。
いずれにしても、わが国民の官僚化に歯止めをかけないと、これからますます大変なことになりそうです。
(PHP研究所2008年1,300円+税)
| 固定リンク
「書籍・雑誌」カテゴリの記事
- ドイツ語で読む珠玉の短編(2026.06.23)
- 山本七平『小林秀雄の流儀』(2019.07.28)
- 田中圭一『うつヌケ うつトンネルを抜けた人たち』(2017.02.20)
- 天外伺朗『宇宙の根っこにつながる生き方 そのしくみを知れば人生が変わる』(2017.02.19)
- 柴田昌治『「できる人」が会社を滅ぼす』(2016.12.30)
この記事へのコメントは終了しました。


コメント