アラン『幸福論』(串田孫一・中村雄二郎訳)
市民講座でフランス思想の読解講座を開くので、テキストにどうかと思い、30年ぶりくらいに読み返しました。やはり名著です。今年前半のテキストはこれで決まりです。後半はこれを続けるか、それともアランの教え子で今年生誕100年を迎えるシモーヌ・ヴェーユにしようか、まだ思案中です。講座がスタートして受講生の意見を聞きながら、ゆっくり考えるつもりです。
それはともかく、アランのメッセージというのは「理性だけではらちがあかないでしょう。そのときは身体に聞きなさい」というものです。身体の発する声に耳をそばだてることの深い意味を悟っているのがアランの特長です。デカルトの情念論に学んで、このような哲学が出てくるところが何ともすごいところです。
ちなみに、翻訳者の一人はわが師匠ですが、師匠もアラン経由でデカルトの情念論を引き合いに出していたのでしょう。本書には様々な思考の鍵が埋め込まれています。ゆっくりゆっくり何度も味わいながら読んでいきたい本です。実際、気に入ったエッセーは二度三度と読み返しつつ、その思考と文章のリズムを味わいながら読み進めるため、読むのに時間がかかるのも確かです。
それにしても、こちらも年をとったせいか、いろいろと身につまされれてわかることがたくさん書いてあります。講座で読むエッセーを選ぼうと思って付箋を貼り始めたら、これまた繰り返して何度も読んでしまいます。付箋もあっという間に10枚を超えてしまって、これなら最初の頁から順番に読んでいく方がいいかという気になっています。
それから、これも若い頃には感じなかったのですが、自分はどう逆立ちしてもこのようなものは書けないということが、いやになるほどはっきりとわかります。若い頃にはこれがこんなに手の届かないところにある才能だとは思いませんでした。自分でも少しばかり文章を書くようになってみると、彼我の違いはあまりにも歴然としています。何の変哲もないような文章ですが、よく見ると独特の論理とリズムでつながっています。論理が微妙に飛躍しながらもつながっているのがわかると快感です。これは真似できるようなものではありません。
原書でもじっくり味わってみるつもりです。
(白水社2008年1300円+税)
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