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2009年3月 2日 (月)

スディール・ヴェンカティッシュ『ヤバい社会学:一日だけのギャング・リーダー』

 アメリカのエスノメソドロジー社会学の流れは、ついにこんなに面白いノンフィクションを生み出すに至りました。映画化の話もあるそうですが、本書自体がすでに見事な構成ですから、そのままシナリオになりそうなくらいです。登場人物が実に生き生きと描かれていて、とても学者が書いたものとは思えません。
 それにしても、無法地帯のスラムにここまで入っていけたのは、ふつうの学者には無理です。著者は名前からもわかるようにインド系の移民ですからある程度入りやすかったのかもしれません。白人ならこうはいかないと思います。しかし、いずれにしても、あまり不自由のない中産階級の家庭に育った好奇心一杯の素直な性格がよかったのでしょう。これも才能でしょうね。
 この1990年代のシカゴの無法地帯では、救急車は呼んでも絶対に来ないし、警察はギャングと変わらずカツ上げにやってきたりはするため、ギャングよりも恐れられています。その中でギャングの中堅幹部や団地の自治会長が、住民の稼ぎの上前をハネながら地域一帯の安全を確保している様子は、なんだか原始社会の部族闘争のようです。
 ギャングの組織経営が大企業の経営とほとんど瓜二つの構造をしているということは、スティーヴン・レヴィットの『ヤバい経済学』にも出てきましたが、本書に出てくるギャングの縄張り争いやシマの獲得手法はアメリカの領土拡大=侵略手法とそっくりです。メキシコからテキサスやカリフォルニアを取り上げたり、ハワイを併合したのと同じことがギャングの世界でそれなりの正義感に基づいて行なわれています。やっぱアメリカですね。下々まで同じ構造をしていることは文化人類学的にも興味深いものがあります。

(東洋経済新報社2009年2200円+税)

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