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2009年5月 9日 (土)

山下一仁『農協の大罪「農政トライアングル」が招く日本の食料不安』

 農協と農林族の政治家と農水省の官僚たちが見事にグルとなって日本の農業と食糧安全保障を破壊してきたことが実によくわかる本です。特に農協はいつのまにか結構な金貸し業者として組織防衛を図るようになっていました。
 何せ、大規模な専業農家を育てるのではなく、小規模の兼業農家による組合を維持するために、意欲的な専業農家に対してはさまざまな嫌がらせをしてきたというのが実態です。兼業農家は土日にしか農業をしないので、いきおい農薬に頼る農法となり、環境にも多大な悪影響を与えてきたわけです。それでまた、農協は高い農薬を売りつけることができるという循環が成立してきました。
 しかし、さすがに兼業農家も高齢化が進み、その結果農協の存続自体も危うくなってきていることに、少しは気がつき始めているようです。それでも何だか少子化の中の地方の弱小私立大学のようで、問題が深刻になっていることは頭でわかっているだけで、おそらく自己改革はできないでしょうね。
 本書の指摘でなるほどと思ったこととして、わが国は水資源が豊富なために工業が発達したということがあります。原材料のさまざまな加工の過程で、廃物や廃熱を処理する際に水が必要になるわけで、アラブなんかは油は出ても水がないために工業団地が作れないわけです。
 また、水田は森から養分を含んだ水を得ると同時に、水で病原菌を洗い流す結果、連作障害が起きないということも教えられました。家庭菜園でも同じ作物を二年連続で植えたりすると悲惨なことになりますからね。たいしたものです。
 さらに、水田というのは森林の保水効果とあいまって大きな洪水を防ぐダムとしての役割も果たしていて、日本の取水量300ミリというのは世界第一位なのだそうです。
 いろいろと勉強になりました。

(宝島新書2009年667円+税)

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