西加奈子『きりこについて』
自分がブスだということに気がついた女の子の「きりこ」が主人公かと思ったら、ちょっと違いました。猫の「ラムセス二世」がイケてます。この小説の始まりはちょっといまいちかなと思いかけましたが、さすが力のある小説家です。いつものように後半に加速して、とってもよい世界に連れて行ってくれました。みんなを勇気づけてくれる物語です。
著者の小説はいつも最後に盛り上がります。最後は群像劇のようにもなるのですが、人間の外見と中身と性という扱いにくいテーマを見事に料理してくれたのは賢い猫でした。この点で人間が猫に学ぶことは少なくありません。
著者はかなりの愛猫家で、猫語についても造詣が深いようです。猫が語るという意味では夏目漱石の猫以上です。なぜかは最後にわかります。新聞の新刊紹介に、本小説執筆中に著者の愛猫が世に召されてしまったとありましたが、そのこともこの小説に深みを与えているのでしょう。
小説後半である会社が設立されます。もちろんフィクションですが、その経緯にネットワーク理論としても興味深いものがありました。ある種の「弱さ」を抱えた人たちがネットワークの中心となっていくというのは、そのとおりですから。そういえば、猫もまたネットワーク作りの名人でした。作家の観察力と直感はすごいですね。
ところで猫といえば、普段お世話している中国人留学生たちのほとんどが猫嫌いであることに驚かされます。みんな猫は不潔だというのです。ちょっとカルチャーショックです。中国はどうやら猫にとって天国ではなさそうです。猫が住みよい国はいい国だと小室直樹が言っていましたが、そうかも。
(角川書店平成21年1300円税別)
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