« 勝間和代『起きていることはすべて正しい』 | トップページ | J.S.ミル『コントと実証主義』 »

2009年7月 8日 (水)

日下公人『日本人の「覚悟」 「芯」を抜かれた人は退場せよ!』

 いつもながら驚くべき博識と斬新な発想によって日本人に自信をもたせてくれる本です。実際、わが国の底力は相当のものだということは舶来好みのインテリの言論からはわかりません。著者のような人がいろいろと事実に基づいて語ってくれることではじめてバランスがとれるのかもしれません。もっとも、すべてのいいものは先進国からやってくると考えるのもまた典型的日本的な現象ではあります。
 感心させられたエピソードをいくつか挙げてみます。

  • 1891年に陸軍歩兵だった二宮忠八はカラスが羽ばたかずに滑空しているのをヒントにして、ゴム動力のプロペラ飛行機を開発し、滑走から飛行する実験に成功した。ライト兄弟の飛行に先立つこと12年前の出来事だった。
  • 江戸時代は、猫も年をとると人間の言葉が分かるようになると信じられていた。
  • 日本はオイルショック以降、省エネ技術が進み、石油輸入量が増えなかったため、これを当てにしていた当時のソ連は経済がガタガタになり、体制転換せざるをえなくなった。
  • 安部元首相は温家宝首相に「中国にも拉致問題はありますよね」と囁いて、思いっきり困らせたことがある。

 とまあ、こんなところに付箋を貼りながら読んでいます。情報や薀蓄は多岐にわたり、面白いったらありゃしません。
 ところで、日本の底力がすごいのは「友だちに誉められたらうれしいとか、互いに認め合う仲間の間で『すごい!』と感心されたいという欲求が満たされれば、日本人は低評価でも全力投球する」(96頁)というところでしょう。これが外国だったら、誉めるくらいなら金をくれということになりそうです。
 実際アメリカでは肩書きだけでなく、大学教授でも年収まで具体的に示さなければ、社会的に認められないそうで、(大学教授は年収は安いけれど企業からお金をもらえる有能な人は自分で研究所を作って羽振りがいいのです)このあたりは文献研究なんかやる人だと大変そうです。私なんか年収に関して同じ大学の教授から気の毒がられたことがあるくらいですから(その先生がもらいすぎているのかもしれませんが)、いずれにしても、ここがアメリカでなくてよかったです、ホント。

(祥伝社平成21年1,600円+税)

|

« 勝間和代『起きていることはすべて正しい』 | トップページ | J.S.ミル『コントと実証主義』 »

書籍・雑誌」カテゴリの記事

コメント

この記事へのコメントは終了しました。