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2009年7月31日 (金)

若林亜紀『国破れて霞ヶ関あり ニッポン崩壊・悪夢のシナリオ』

 特殊法人の内部告発でデビューした著者ですが、もはや完全に独立営業のライターになっちゃいました。たいしたものだと思います。厚労省にも弁護士をつけない本人訴訟で勝利するし、半端でなく根性がある人です。
 文章には行動力と正確なデータに裏付けられた迫力と説得力があります。アイスランドに取材しては金融破綻現場の雰囲気をふつうの人びとから聞き出し、文部科学省のお役人の住む官舎に張り込んでは入学式当日に「私立ですか、公立ですか?」と尋ねてみたりします。当然文科省の子どもたちの多くが「ゆとり教育」を避けて私立に進学していることがわかります。
 本書によると、ゆとり教育の旗振り役だった当時文科省の寺脇研なんかはそもそも子どもがいないそうで、あんな抽象論をとくとくと語るのも頷けます。今はどこかの大学の先生ですもんね。体質的には適職でしょうけれど、何だかなあ。雇うほうにも問題がありますよ、これ。
 さらに著者は自衛隊の予備役の訓練に自ら参加して、予備自衛官としての顔も持っていたりします。自衛隊の駐屯地に寝泊まりし5日間の実戦訓練を受けたときのルポですが、自衛隊の内部の雰囲気もよく伝えてくれています。
 しかし、何と言ってももともと厚生労働省の研究所にいた著者は、今までのいきさつも含めて厚労省にはひとかたならぬ憤りを感じているようです。悪事の証拠もたくさんつかんでいますし。
 意外だったのは、雇用・能力開発機構の存続に森永卓郎や玄田有史が尽力していたこと。なーんだ善人面して結構露骨な小悪人だったのかということがわかっちゃいました。きっとつまらないしがらみでもあるのでしょう。でも、正直がっかりです。
 著者の描く日本崩壊という悪夢のシナリオが実現しないことを祈るばかりですが、やっぱ役人はえげつないです。そもそも扱うお金の額が違いますし、その使い途は想像をはるかに超えています。
 しかし、話はお役人に限りません。今や日本国中の職場がお役所化していますので、今後いろんなところで現実にシステムが崩壊していくことになるような気がします。くわばらくわばら。

(文藝春秋社2009年1429円+税)

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