日下公人『[ベストセレクション]未来の読み方 明日が見つかる7大法則と51の小法則』
新刊なので早速入手して読んでみましたが、2004年の『時代はいつもこう変わる』とほぼ同じ本でした。インターネット上で入手すると、こういうことがよくあります。でもまあよしとしましょう。
というのも、著者の本は何度読んでも感心させられるところがあるからです。今回も以前読んだはずなのに新鮮な驚きを覚えた箇所がありました。こちらの問題意識も徐々に変わっているせいだと思いますが、今回は演繹と帰納をうまく説明しているところに感心させられました。
すでに正しい理論や法則ができていて、これを適用していくのが演繹法で、わが国の教育はこれ一辺倒だという指摘には唸らされました。確かにこれは文化輸入国に適している思想ですね。外国人タレントの言ったことや行なったことを追いかけていればすむわけですから。
これに対する帰納法は、あらかじめ答えが決まっているわけではないので、とにかく材料を集めて仮説を練ることになります。しかし、この世のどこにもないことを考え出していこうとすれば、帰納法によるしかないというのは確かで、そのこと自体はイギリスのJ.S.ミルなんかが指摘していることでもあります。
日下さんのすごいのは「帰納法は無駄が多いが、そのかわり楽しい思考法でもある」という指摘です。材料から何を抽出するかは人それぞれで、それは感覚的な考え方であるとも述べています。そして「その中で宝石のようなアイデアにぶつかり、仮説が次の発見に結びついていく。つまり、帰納法こそ文化の時代の思考法、先端国の思考法なのである」(147~148頁)というわけです。
これは科学的発見の現場の空気をよく伝えていると思います。この「楽しい」というのがとりわけ重要です。あのノーベル賞を受賞した島津製作所の田中さんはこんな感じで実験に取り組まれていたのではないでしょうか。
このところミルやさらにはベーコンにさかのぼって、このあたりの事情を調べていたのですが、本書からいい指針を得ることができました。感謝です。
(PHP研究所2009年1,000円税別)
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