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2009年8月23日 (日)

谷沢永一・渡部昇一『人生の難局を突破し、自分を高める生き方。』

 九州に出張していました。専門学校の学生はどこも減少気味ですが、かえって学生の質は良くなってきているような気がします。思いのほか講義に集中する姿勢ができていました。通信教育は何といっても一般学生のレベルが一番高いのですが、専門学校生で短大の通信教育過程を併修する学生も悪くありません。
 モチベーションに一番問題があるのは通学過程の学生たちで、教える側にとってもあまりにストレスフルで心身ともにダメージを受けますので、今年は私は通学部の兼任授業をすべて外してもらいました(本当は事務職兼務を外してもらいたいところですが)。

 さて、本書はいつもの二人の対談本です。戦前戦後の大阪や山形県鶴岡の状況がわかって貴重です。とくに鶴岡は明治政府に最後まで降伏しなかったところで、報復を受けなかった藩士たちは西郷隆盛に恩義を感じて西郷南州遺訓を書き溜めたことでも知られています。ユニークな土地柄のようです。
 また、当時のタバコ屋のおばあさんのような縁談の「聞き合わせ」をする人は、お見合い相手を銭湯で待ち伏せして「下調べ」をするのが当然とされていたというくだりには驚かされました。これは世間の圧力の強さの具体例として覚えておこうと思います。
 なお、井伏鱒二の主要著作がことごとく盗作だったというのは谷沢さんが実証したことだったのですね。それにもかかわらず、多くの関係者が迷惑するせいでしょう。みんなあたかもグルのように口をぬぐっています。インターネットで検索してみるとなるほどいくつか記事も出てきます。猪瀬直樹なんかもはっきり指摘しています。
 それにしても、井伏鱒二が唐沢某とかT口ランディみたいな作家だったとは知りませんでした。文化勲章までもらっている大作家なので、これでは引っ込みがつかない関係者がうじゃうじゃいるはずです。ちなみに、この井伏鱒二現象と東京裁判を結びつける渡部氏の発言が、早速インターネットのブログ上で盗作されていたのは笑えました。新聞の投書欄もしばしば剽窃が行なわれますし、記者も他紙の記事をそのまんま書いて問題になったりすることがありますので、剽窃にはもはやアマもプロもない感じです。
 ご本人たちは平坦な人生を送ってきたといっています。そりゃまあ確かに動乱の時代ではありませんでしたが、それでもお年寄りの話を聞くことはやはり興味深いものです。人生の難局を乗り切るヒントに満ちているだけでなく、雑学も増え、日々の生活が楽しくなるような気がします。

(PHP研究所2002年1,300円税別)

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