ジョン・ロック『人間知性論(四)』
ようやく第四巻を読み終えましたが、この巻が一番興味深かったです。といって、四巻から読んだとしても、脈絡がわからないでしょうから、やっぱり楽はできないのかもしれません。
ロックの経験論は人間が直感的に真理を認識できるという事実が前提とされていて、その経験を確実なものとして構成しているので、ヒュームのように癖とか習慣で観念連合が自ずとできあがるとかくいうのではなく、そのあたりは実にはっきりしています。経験を言語との関わりで論じていても、不安になることがありません。出発点が合理論的なのはちょっと奇妙な感じもしますが、題材はあくまで経験の範囲なので、本人としては何も矛盾を感じてはいなかったのだと思います。
ロックは信仰の人としての立場も鮮明で、信仰によってできることとそうでないこととの違いもしっかりとわきまえていて、要するに一級の哲学者です。もうちょっとたいしたことないのかと勝手に思っていましたが、とんでもないことでした。結果的にカントに近い部分もありますが、もっと生真面目な感じがします。
この点ではカントはもっと冗談の分かる人だと思いますが、ロックは戦闘的でかなり生真面目なので、あんまり余裕がない感じです。レトリックなんか大嫌いのようですし。しかし、それだけロックのほうが論理的に突き進むところがあります。下手に冗談を言うと怒られそうですが、哲学としては魅力的なところがあります。
翻訳については、これだけのものを本当によく訳されたと思いますが、独特の訳語にはなじみにくいものも少なくありませんでした。「真知」knowledge, 「理知」reason, 「理会」understand, (でしょうか、索引に載っていません)「複雑観念」complex idea とか、もう少し現代的にやれそうですが、新訳が出てくれるとありがたいですね。いずれにしても真剣に取り組むのなら、原書に目を通しておく必要がありそうです。
さて、以前にも書きましたが、マイクル・ポランニーの『個人的知識』はこのロックの影響をかなり受けている気がします。宗教的立場も近いと思いますし、そのあたり誰かちゃんと論じてくれる人はいないでしょうか。
(大槻春彦訳岩波文庫1977年800円+税)
| 固定リンク
「書籍・雑誌」カテゴリの記事
- ドイツ語で読む珠玉の短編(2026.06.23)
- 山本七平『小林秀雄の流儀』(2019.07.28)
- 田中圭一『うつヌケ うつトンネルを抜けた人たち』(2017.02.20)
- 天外伺朗『宇宙の根っこにつながる生き方 そのしくみを知れば人生が変わる』(2017.02.19)
- 柴田昌治『「できる人」が会社を滅ぼす』(2016.12.30)
この記事へのコメントは終了しました。


コメント