長崎福三『システムとしての〈森-川-海〉 魚付林の視点から』
大学主催の市民向け連続講座「木を活かし森と生きる」が先週から始まりましたが、その中で森林組合見学バスツアーのガイドをやる羽目になってしまいました。そこで、あらためて森林や環境の問題を考えるための資料を揃えているところです。
本書の副題にある魚付林(うおつきりん)というのはその中のテーマの一つです。漁師が植樹をしたり、森林管理をすることは江戸時代までは伝統的に意識されてきたことだったのですが、明治時代以降の急速な近代化の中でないがしろにされてきました。本書はそのあたりの歴史的沿革も含めて森と川と海を一体となったシステムとしてとらえる視点を提供してくれます。明治時代以降の森林政策の愚かさもよくわかります。
やっぱり官僚はその始まりからわが国をダメにしてきたようです。戦後すぐの官僚は優秀だったとかいうのは全部神話ですね。明治時代以降官僚として登場してからは、今までずっと同じ調子で仕事をしてきたはずです。かつての日本人は科挙を取り入れないという優れた見識を示していたのに、やはりこれはパンドラの箱だったんですね。戦後の森林行政なんかでたらめの極致です。森も海も川も荒れるはずです。これが侍だったら腹を切るところですが、官僚は人(民間)のせいにして天下りします。
ところで、現在は農林水産省ですが、このお役所がばらばらだった頃は森と川と海が一体だという発想すら消えかけていて、本格的研究が進んでいなかったようですが、その理由はわかる気がします。お役所が研究費や予算を出してくれないテーマには学者という魚は群がってこないのです。
それはともかく、本書では森から流れ出てくる栄養豊かな水が魚を育てているということがはっきりわかります。乱伐をすると漁場が消えてしまうのです。魚付林というのもそのことで、岩場のぎりぎりのところまで鬱そうと木が生い茂っていると、日陰ができて魚が集まるということも言われますが、何よりそこから流れ出るミネラルや有機物をふんだんに含む水がプランクトンのえさになるとともに魚の栄養になっているのです。そして、その意味ではすべての森が魚付林だといういうことにもなります。
本書は実証データがたくさん載っているので、バスの中で配付する資料を作るのにも役立ちそうです。いい本を見つけたものです。
(農山漁村文化協会1998年1,857円+税)
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