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2009年9月13日 (日)

三井秀樹『かたちの日本美 和のデザイン学』

 日本の浮世絵がフランスの印象派に与えた影響は有名ですが、著者によれば、アールヌーボーからアールデコへの流れにも強い影響を与えているそうです。そう言われてみれば、ロートレックのポスターはもとより、クリムトの装飾的な絵画の大胆な余白は、確かに浮世絵の影響のようにも見えてきます(その点ではパリ万博の影響も論じるべきでしょうけれど、これは触れられていませんでした)。
 また、日本文化のバウハウスへの影響も論じられていますが、これはあまり記述が具体的ではなくてちょっと残念です。全体に理屈よりも事実を重ねていく書き方なので、実証的な資料が手薄なところは雰囲気に流れてしまいます。でも、そうだとしたらやはり面白いと思います。近代デザインは浮世絵をはじめとした日本文化の影響の下に出発したということになるからです。あんまり極端に愛国的な学説は昔のルイセンコ学説みたいになりますが、実証できればこれはすごいことです。
 著者は単なるエキゾチックな魅力だけで日本文化が世界に影響を与えるに至ったとは考えていません。そこには「自然を真摯に見つめ、そこから美の造形原理を見出した私たち日本人の先見の明」(93頁)があったからだとしています。自然を抽象化し、何かを自然に見立てたりするといった独特のアプローチの中には黄金比も含まれているそうですので、西洋とは違いはしても、これも普遍的な美だったわけです。
 そうでしょうね。そうでなければ世界に広がりませんから。
 そういう著者ですから最近のアニメ文化の「クールジャパン」にも肯定的です。そうしてみると、あれは現代の浮世絵なのかもしれません。浮世絵は春画で広がったというようなことは上品な本書では触れられていませんが、その点でも、エロアニメというのが対応しているようです。「萌え~」なんて嫌いなことばですが、これもすでに世界に広がっているのかもしれません。

*179頁に「なんとも体たらくな有様だったのである」という表現がありますが、これはどうにかならないでしょうか。デザインの先生だから仕方ないですが、編集を通ること自体が不思議です。

(日本放送協会2008年920円+税)

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