高山正之『世界は腹黒い 異見自在』
これはすごい本です。現在は「週刊新潮」に「変見自在」を連載中の著者ですが、それ以前の1998年から2003年まで産経新聞の夕刊一面に載せていたコラムを集めたのが本書です。こちらのほうが字数に余裕があるようで、東チモールやミャンマー、あるいはイランの歴史的政治的情勢がよくわかります。分量も上下二段組み384ページと最近の新潮社から出ているほんの3倍くらいあります。普段から辞書的に使いたいので、これからいつも机上に置いておくつもりです。
それにしてもよくもまあここまで現地に足を運び、取材を重ね、当事者に直接話を聞き、ときにはランパブのお姉ちゃんにも話を聞いたりもして、すごいですね。また、アメリカの上院議会報告書などまで丹念に目を通して、学者顔負けの文献処理能力があります。こういう人こそ本当に真のジャーナリストだと思います。
今は産経新聞もほとんど面白い記事が載らなくなりました。こんなプロ中のプロのような記者がいなくなってしまったのかもしれません。みんな記者クラブで談合しては同じ話を載せています。朝日とは方向は違いますが、記事がつまらなくなってきた時期は朝日と同じころからだったかもしれません。
産経新聞はここ何年も反民主党あるいは反小沢キャンペーンを張っていて、その情報の操作手法だけでなく、口調までもが実は朝日とそっくりになってきました。特に選挙後は新政権に対してやたらとあてこすったような口調が目立ち、右翼版朝日新聞です。
しかし、朝日も産経も、また政治家よりも政治力のあるあのナベツネのいる読売も本当はみんな利権談合体質なので、役人や政治家を笑えません。何よりわが国をだめにしてきた官僚制に自ら絡めとられているからです。実際、組織に自浄能力がなさそうなところは官僚組織と共通しています。
著者に続いて今後若くて気骨のあるジャーナリストが新聞社から育ってこないようであれば、この業界はおしまいでしょう。朝日なんか本社の記者だけで1500人を抱えているそうですから、人件費がバカにならないでしょう。下手をすると大学よりも崩壊が早いかもしれません。
(高木書房2005年1800円+税)
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