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2009年9月 9日 (水)

三浦朱門『たそがれ男と冬枯れ女』

 著者のエッセーはいつも楽しませてくれますが、単純なエッセーではなく、描写に妙にリアリティーがあるのが特徴だということに、本書を読んではじめて気づかされました。もともと小説家ですから当然かもしれませんが、半端な筆力ではありません。説教臭くなく本当のことをさらっと書けるのはさすがです。
 そんな著者が老夫婦の生き方を指南をしてくれるわけですから、何だかわが身の来し方行く末にも思いを馳せずにはいられません。知らない男女が結婚して家庭を持ち、子どもも家を出てしまってからどうするのかということですが、いずれにしても最後に老夫婦がお互いに元気でいられるのは幸せなことです。
 私の母が癌で亡くなったあと、父が「戦友みたいな存在だった」と言っていましたが、長年連れ添うとそんな感じになってくるのでしょう。著者も男が一人で残されたときに備えて家事を少しずつできるようにしておくといいと書いていますが、父はこれを実践しています。
 本書には三浦家の事情もときおり述べられています。息子さんを名古屋の大学に送り出したとき、奥さんが涙ぐんでいたとか、その息子さんのお子さん、つまりお孫さんももう大学生になったとか、時の流れを感じます。奥さんの曾野綾子さんは最近はペットボトルのふたが開けられなくなったとも書かれています。奥さんも相変わらずの健筆ぶりですが、やはりそれなりに筋力は衰えてきているのですね。
 そういえば息子さんの勤める兵庫県の大学が募集停止になったという報道がありましたが、著者もさぞかしご心配でしょう。1926年生まれの著者ですから、今年で83歳ですか。肝っ玉の据わった人ですから大丈夫でしょうけれど、なかなか静かで穏やかな老後とはいかないようです。

(株式会社サンガ2005年1500円+税)

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