« 日下公人・高山正之『アメリカはどれほどひどい国か』 | トップページ | 小坂貴志『異文化コミュニケーションのA to Z』 »

2009年9月 2日 (水)

内村鑑三著・鈴木範久訳『代表的日本人』

 先日ブダペストでハンガリー人の恩師の一人と話をしていて、英語の著書があると便利だろうなと痛感しました。そこで、帰国後直ちに英語による著書出版プロジェクトをスタートさせました。というのは冗談ですが、このところ毎日英作文を勉強しなおしているところです。
 実際に英語の本を自費出版しても日本の十分の一以下の経費ですむとは、アメリカに住む日本人女性研究者の話です。現に彼女のアメリカ人のご主人は哲学の本を何冊か出版されています。原稿さえ揃えば(そこが問題ですが)本を作ること自体は夢物語ではないようです。

 本書は内村鑑三が外国人向けに書いたわが国の偉人伝の翻訳です。外国人向けの書き方がところどころうかがえますが、平易な語り口でありながら、情熱的で濃い内容の本です。確か、クリントン元大統領が本書で上杉鷹山を知り、感銘を受けたと聞いたことがあります。まあ、リップサービスでしょうが、鷹山は実際、クリントンよりもはるかに立派な人物です。鷹山だったらあのいかにも汚い対日企業訴訟の音頭をとったりはしなかったでしょう。
 鷹山以外にも、西郷隆盛、二宮尊徳、中江藤樹、日蓮上人と世界の偉人にひけをとらない人たちが紹介されています。個人的には二宮尊徳の言動に強く惹かれました。紹介されている尊徳の言葉にこうあります。
 「国が飢饉をむかえ、倉庫は空になり、民の食べるものがない。この責任は、知者以外にないではありませんか。その者は天民を託されているのです。民を善に導き、悪から遠ざけ、安心して生活できるようにすることが、与えられた使命ではありませんか。その職務の報酬として高禄を食み、自分の家族を養い、一家の安全な暮らしがあるのであります。ところが今や、民が飢饉におちいっているのに、自分には責任はないなどと考えています。諸氏よ、これほど嘆かわしいことを天下に知りません。この時にあたり、よく救済策を講じることができればよし、もしできないばあいには、知者は天に対して自己の罪を認め、自ら進んで食を断ち、死すべきであります!ついで配下の大夫、郡奉行、大寒も同じく食を断って死すべきであります。その人々もまた職務を怠り、民に死と苦しみをもたらしたからであります。」(103-104頁)
 こうして進んで犠牲になることで人々に道徳的影響を残すことの効果がこの先論じられますが、このあたりの記述は誰よりもまず役人連中に読んでもらいたいところです。二宮尊徳像が今日全国の小学校からなくなってしまったのは、校長以下先生たちがこぞって役人化してしまったからかもしれません。
 いい本です。原書を探して外国人の友達にプレゼントするといいかもしれません。ただ、翻訳について一点、原書の雰囲気を大事にするつもりかもしれませんが、単位をマイルとかエーカーのままにしておくのは困ります。尺貫法にする必要はありませんが、岩波書店は昔からメートル法を推進する立場ではなかったんですかね。

(岩波文庫1995年500円+税)

|

« 日下公人・高山正之『アメリカはどれほどひどい国か』 | トップページ | 小坂貴志『異文化コミュニケーションのA to Z』 »

書籍・雑誌」カテゴリの記事

コメント

この記事へのコメントは終了しました。