八木谷涼子『キリスト教歳時記 知っておきたい教会の文化』
キリスト教の祝祭や聖人にちなんだ祝日の歳時記です。祭式儀礼の解説と代表的な聖人の人物伝にもなっていて、通読しやすい本です。また、聖人といってもカトリックだけでなく聖公会や東方正教会の見解もフォローしてあり、祭式儀礼もプロテスタント諸宗派のそれにも触れていて、バランスのとれた記述になっています。
西洋の文学を読んでいて「無宗教」の日本人の躓きの石になるのが、聖書の知識とこうした祭式儀礼や聖人伝説の基礎知識です。中でも翻訳に携わっている研究者はいろいろと大変だろうと思います。著者もその業界の人ですが、あとがきにもあるように、実際にいろんな宗派の礼拝を見て歩くことがお好きなようで、単に書物から得られただけの知識でないところが記述にも反映されています。
聖書の知識もこうして別の角度から光を当てるとあらためていろいろなつながりを発見できます。マリアとエリサベツの邂逅のシーンで、エリサベツのお腹にいたのが洗礼者ヨハネだったということを今回初めて知りました。洗礼者ヨハネには昔から強く惹かれるところがあって、まあ、簡単に言ってファンなのですが、聖人伝というのはそうした人びとの気持ちに答える役割もあるのかもしれません。
同様に私はイエスの復活を最初に目撃したマグダラのマリアも長年のファンなのですが、これはマグドルナというハンガリー人の女優と同名の才色兼備の歴史家、そしてエル・グレコの絵画のイメージが手伝っています。こんなの姓名判断みたいですが、それでも聖書の記述を知らずにその人となりや作品ができあがるわけではないので、ちょっとは意味があるような気がしています。
本書の記述を読むとマリア・マグダレーナに限らず、聖書の登場人物たちが世界中の文学者たちの想像力をかき立ててきたこともわかります。何はともあれ、座右のレファ本としてこれからも重宝しそうな本です。
(平凡社2003年680円+税)
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