永井荷風『濹東綺譚』
出張先で入手しました。再版が出たばかりだったのですね。表紙に玉の井が舞台とあったので、これが岡野雅行さんが若いころ世間を勉強したというあの玉の井かと手に取ってみたところ、目に飛び込んできた文章の美しさにあらためて驚かされて買ってしまったわけです。
これまで荷風散人のものはエッセーしか読んだことがなかったのですが、小説を初めて読んでみてびっくりです。これを読まないのは人生の損失でしたね。今頃になってからでも気がついて本当によかったと思います。これから少しずつ読んでいくことにします。
荷風散人は世之介や光源氏の系譜に連なる人なのでしょう。女性の美しさを追求する求道者なのかもしれません。今にもこわれそうなそのはかない美しさをこんな風に描くことができるのですね。さすがです。
木村荘八の挿絵も効果的で、今はほとんど名残がなくなっている玉の井の雰囲気がそこはかとなく伝わってきます。旧仮名遣いだったらもっとよかったですけれど、これは岩波文庫の方針だから仕方ないでしょう。復刻版でも探してみましょう。
(岩波文庫1991年改版、2009年第72刷460円+税)
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