西加奈子『うつくしい人』
著者の作品では、小説でしか表現できないような微妙なことがらが、いつも見事な物語にまとめられていて感心させられます。そして、なるほどこういう展開だったのか、と唸らされることしばしです。いつものように物語は途中から加速がついてきて、何だかとてもいい世界に連れて行ってくれます。
「うつくしい人」とは主人公の姉のことであり、脇役の外国人のことですが、同時に主人公はこう言います。「私は誰かの美しい人だ。私が誰かを、美しいと思っている限り」(224頁)。この台詞はいいですね。この境地に達するまで世の中の人はどれだけ苦しんでいることでしょう。主人公の女性も他人の目を病的なほどに意識しすぎて自分を見失っている苦しみを抱えています。そのあたりの描写はよくもまあここまでというほど細かいものです。
こういう世界を描くための道具立てや登場人物たちの設定も何とも意外で面白いです。ネタバレのようになっても困るのであまり紹介できませんが、舞台は四国の離島の高級リゾートホテルで、先の外国人を含めて、ちょっと奇妙で可愛げのある人たちが出てきます。そして、直接には登場しないひきこもりの姉の存在が物語の一つの大きな柱になっています。
こういう小説を書けるのはやはり才能でしょう。著者の小説からは、書かずにいられなくて書いて、あるいは書くのが楽しくて仕方ないという感じで書いているのが伝わってきます。そのことが自己満足にとどまらず、これだけ名品の数々を生み出してきたというのは、本当にとんでもないことです。
一般的なわが国の純文学の作家は作品数も少なくて、いつもうんうんと苦しみながらやっとの思いで書き上げている感じがしますが、著者はそういう世界とは無縁の作家のようです。
(幻冬舎2009年1300円+税)
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