長谷川慶太郎『超「格差拡大」の時代』
少し前の本ですが、貴重な情報が含まれていました。2005年のニューヨーク大停電を受けて成立した「エネルギー産業再建基本法」は発議されてから上下両院を通過するのに一週間しかかかっていないということです。わが国では考えられないことですが、このスピードは行政よりも政治が圧倒的優位に立つアメリカ社会だからこそ可能なことなのでしょう。こういうのっていかにも狩猟民族だなあって感じがします。
2005年当時は小泉政権の最後の時期で本書の題名にあるような「格差拡大」の時代であったことも確かで、アメリカ経済の好調ぶりも目立っていましたが、この当時のアメリカ金融市場では、金融商品の供給不足が目立ち、だぶついた資金の行き場がなく、住宅債権に向かわざるをえなくなっているということにも触れられています(126頁)。
後から思えばこれがバブルの前兆だったというか、その直接の原因を作ったものでしたが、さすがにそこまでは著者も見通してはいません。むしろ、1987年の著書『投機の時代』でバブルを煽ったとして批判を受けたことに対する弁解が述べられています(155-156頁)。本当にそうかどうかを確かめるためには『投機の時代』を読めばいいのかということがわかりました。探して読んでみます。
それで、結局のところ、価格破壊の時代から抜け出すことができるのはわが国の誇る技術力のみだという主張は十分納得がいきます。それしかないですからね。技術の話は著者が現場に行って確かめてきたことなので浮わついていません。日本周辺の海域に大量に眠っているメタン・ハイドレードや、世界中にある天然ガスを利用可能にする技術力があれば、世界をリードできることは間違いありません。トヨタ1社で韓国一国と同じくらいのお金を技術開発につぎ込んでいるくらいですから、近いうちに何かが出てくることでしょう。
本書には出てきませんが、町工場の職人岡野雅行氏は水で走る車を開発中ですし、新技術は世界を明るくしてくれます。石油を巡って国家間が権謀術数の限りを尽くすなんてえのがばからしくなるといいですね。
(東洋経済新報社2006年1500円+税)
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