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2009年9月12日 (土)

松永勝彦『森が消えれば海も死ぬ 陸と海を結ぶ生態学』

 昨日読んだ本と同じ動機で手にしましたが、本書は生態学的な視点に加えて化学的なアプローチを試みているところに特徴があります。特に鉄(フルボ酸鉄)が海洋光合成生物の生成に大きな影響を与えていることが強調されています。これは森林から川を経て海へと流れてくるわけですから、漁場が近海にできることを科学的に裏付けています。
 また、二酸化炭素をプランクトンや昆布の中に固定するというアイデアも面白いと思います。ただ、全体にしばしば推測に頼って断定できていない事実も多いので、今ひとつ押しの弱い印象のある本です。
 1993年初版の本なので、データや技術の発展具合もちょっと今とはずれているところがあるようです。二酸化炭素の固定についても今日ではさらにいろいろな技術が開発されているかもしれません。地球温暖化についても当時の議論を鵜呑みにしているところがあって今ではちょっと書き直した方がいいような感じです。
 しかし、自然石を利用した護岸工事や、河川の水質に変化を起こさせないダムについては、写真付で解説されていて有益です。すでにわずかながら実現していたのですね。1993年にこういう状況だったとしたら、今はどうなのか知りたいところです。本書で触れられていた宮城県の「牡蠣の森を慕う会」による植林等の林保全活動は、先日にも新聞で取り挙げられていました。他の事がらについてもデータが揃ってきているのではないでしょうか。
 というわけで近年の状況を踏まえた改訂版を出してもらえたら嬉しいですね。

(講談社1993年820円税別)

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