屋山太郎『天下りシステム崩壊―「官僚内閣制」の崩壊』
2006年4月時点で中央省庁が所管する4,576の公益法人、特殊法人、独立行政法人に国家公務員OB27,882名が在籍し、そのうち4割超が民間企業の取締役に相当する役職員でした。そして、それらの法人に対して06年度は補助金交付や業務契約の形で、中央省庁から12兆6,047億円が支出されていたそうです(66頁)。
このとんでもない数字を維持するためにだけ行なわれてきたのが官僚主導の政治ですが、今回の政権交代で、この「官僚内閣制」が本当に終わりを迎え、議院内閣制に移行するかどうかはまだまだ未知数ですが、今のところ可能性としてはかなりのことができそうに思います。現段階で道路特定財源の一般財源化と天下りの廃止、特殊法人の整理縮小を進めるだけでも相当のお金を捻出できそうだからです。
本書は昨年の福田政権の頃に書かれた本ですが、時代の空気が実に正確にとらえられています。たとえば「自民党が内政上の失策を重ね、国民は自民党に愛想を尽かしている。この辺で政権交代をさせたほうがよいと大半の国民が思っているようにみえる」(238頁)また、地方分権を断行できるのは、官僚とのしがらみが少ない民主党に資格があり、実行力もあると判断できる」(231頁)とも述べています。
それはそれとして、安倍政権から福田政権に変わったところでの官僚の巻き返しと、人心を読めない自民党政治のじたばたする様子が活写されています。その後から今年の衆院選までの流れを見ても、自民党はどうやら参院の過半数を失った意味を最後の最後まで分からなかったようです。
なお、著者の安倍元首相への評価が高かったのはちょっと意外な気がしましたが、言われてみると確かに重要な法案をうまく通した側面は否定できません。その点ではちょっと納得です。それ以上に驚いたのは官僚の様々な抵抗ぶりです。これじゃあ安部さんも病気にもなろうというものです。
他方小沢一郎の大連立を巡る右往左往ぶりも容赦なく批判しています。その行動パターンは田中角栄直伝のものですが「大連立構想を党執行部全員に拒否されて、己れの限界を知ったようだ。党内を圧迫すれば押し込められた圧力で自分が吹き飛ぶこともあると初めて悟ったのではないか」(229-230頁)と述べています。たぶんそうなのでしょう。だから、その後小沢一郎が選挙に専念したのはよい選択だったと思いますが、その後の組閣で院政を敷いているという一部マスコミの見方は決して当たっていないとも思います。
また、これとは別に、道路公団の民営化委員会委員だった猪瀬直樹と道路族の談合や、中教審の山崎正和の頓珍漢ぶりもしっかり書かれていて、官僚だけでなく政権におもねるインテリのいやらしさもはっきりわかるようになっています。
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それにしても、天下りの実例については長いこと観察してきましたが、彼らは本当に驚くほど仕事をしません。ただ、前例のないことにだけは断固として反対します。やっていることはそれだけです。最初は毎日近所を散歩したり昼寝をしたりて定時に帰って行くという仕事ぶりを続けて苦痛ではないのだろうかと思いましたが、実はお役所時代から変わらぬ働きぶりなので、こちらが心配をするまでもなく健康体そのものなのです。
周囲の人びとはそんな人びとを当然冷ややかに見ていますが、やっと定年かと思ったら定年延長になったり、補充人事が発令してがっかりさせられたりします。しかし、天下り機関が民間の業務にどんどん食い込むようになり、また、民間企業にも役員待遇で迎えられる人を観察できる機会が増えることで、こうした事情はおそらく全国民の共通了解事項となってきたのでしょう。
こうして、それはあんまりだろうと思っている人びとが、かつては小泉純一郎を支持し、今は民主党を支持しているという流れを、記者クラブ発表の各紙すりあわせ記事を書いている新聞記者たちはまったくつかみそこなってきたように感じます。
(海竜社2008年1600円+税)
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