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2009年11月30日 (月)

武田一顕『ドキュメント政権交代 自民党崩壊への400日』

 やっぱりそうだったんだ、と思えるところがたくさんある本です。さすがに政治記者ですから、普通の人が見られないところをよく見てきていますが、これも見る意志がなければ単なる記者クラブに出入りする羽織ゴロと変わりません。著者はその意志の点で明らかに他の記者たちよりも優れています。
 著者は「政権交代をすること自体に意味があるのだ」(84頁)と言います。案山子が総理大臣になったとしても、今の自公政権でなければ、それでいい」とまで言い切っています。
 また、東京地検特捜部についても、それは「戦後一貫して権力に追随し、その敵対者を妥当してきた組織だ」(122頁)と言います。このいい切り方は見事です。検察・警察を監視することができるのはジャーナリズムだけだったのですが、今までは当然ながらその役割を果たしてきませんでした。しかし、著者のような人がいれば話は別です。
 もっとも、最近は裁判員制度ができたので、これがある意味では実は検察批判の意味を持っているということに気がついている人はあまり多くないようです。検察の立証の妥当性を検証するのが裁判員の役割ですから、そこははっきりさせておいた方がいいと思うのですが。
 かくいう私にも裁判員の名簿に載る予定だとの連絡が来ましたが、問い合わせてみたら、大学で法律を教えていることに該当するそうなので、どうやら名簿から外れることになりそうです。
 それはともかく、話を戻しますが、本書では取材を通じてでしか知ることのできない情報も印象的でした。たとえば、新潟での麻生総理の演説のとき、演説の最中に聴衆がどんどん帰って行ってしまったこととか、その演説の際に総理お得意の漢字の読み間違えや暴言をしたら「即座に訂正できるよう街宣車の陰に秘書官が控え、聴衆からは見えないようにしゃがんでいた」(204頁)といったところです。これでは選挙に勝てるはずがありません。
 巻末に小沢一郎へのインタビューも載っています。このインタビューはもとより、本書全体が小沢嫌いの人にも極めて有益な内容です。次の政権交代を考えるためにも、読んでおいてしかるべき本です。

(河出書房新社2009年1600円税別)

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