色川武大『うらおもて人生録』
元博徒による人生論です。人間の運とのつきあい方が書いてあります。見事です。運というものと真剣に付き合うことを考えておかなければ、堅気でも道を踏み外す恐れがあることも教えてくれます。思えば誰にとっても本当は人生はギャンブルなんですよね。
それはともかく、本書の至る所に金言がちりばめられています。座右の書にして、折に触れて読み返すようにしたいと思います。
元劣等生で不良の著者は、同じ劣等生諸氏に向けて愛情を込めて書いているので、同類の私は不良ではなかったにせよ、やはりほっとさせられます。優しい人だったんでしょうね。でも、優しいだけではなくて、実に鋭く厳しい観察をする人でもあります。本当の意味で他者に対して愛情にあふれた見方をする人なのだと思います。
元々は新聞の連載コラムとして書かれたもののようですが、連載中は意外に母親の読者が多かったようで、それを受けて「お母様方へ」という章もあります。ギャンブラー的な生き方は基本的に男が多くて、著者も劣等生の若い男性向けに書いていながら、実際にはおそらく読者の反応として母親から手紙が寄せられることが少なくなかったのだろうと思います。
そういう男の子をもつ母親もまた本書を読むとある意味で安心させられるところがあったのでしょう。だからこその読者の反応だと思いますが、本書では普遍的な魂の技術が指南されていますので、優等劣等に限らず、また母親や息子に限らず、できるだけ多くの人に読んでもらいたいと思います。母親は安心し、息子は勇気づけられ、父親ももう一勝負するかという気になることでしょう。娘は未来の夫に思いを馳せるのかなあ。
私もまだまだこの先ギャンブル的人生が待ち受けているかもしれません。実際安定していると思っていた職種でもどんどんつぶれていく時代に入っています。大学も例外ではありません。いろんな意味で、現役として助言を仰ぎたいと思います。
(新潮文庫昭和62年514円税別)
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