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2010年1月28日 (木)

柏文彦『地侍の魂』

 地侍というのは鎌倉時代後期から戦国時代にかけて活躍した武装農民のことで、著者によると「彼らは何のつても無く独力で荒野を切り拓き、優れた農業技術と工夫で生活基盤を築き上げ、企画力。経営力を駆使して富を蓄積し、それから得た自由、独立、尊厳を守るために武装した人々である」(13頁)とのことです。
 この厄介な存在は秀吉の兵農分離政策により認められなくなりましたが、江戸時代には下級武士、有力農民、自立した承認といった姿に変わって、地侍の精神を発揮し続けました。当時世界最先端技術だった先物取引や複式簿記を導入したのも彼らだったそうです。
 確かにかつての江戸というのは、世界史上最も見事な社会制度と生活環境を実現させた都市だったと思いますが、そこで文化の力をどんどん蓄積していたのがこの地侍出身の人びとだったのかもしれません。
 とすれば、今ほとんどの国民がお上から何かをしてもらうことばかりを期待するような心持ちになっていることは、堕落以外の何物でもないと言えるのではないでしょうか。
 みんな誰か偉い人にぶら下がって生きていこうとしているなんてJALみたいではないですか。大学も地方自治体も補助金ばかりあてにしていると―ずっとそうでしたが―JALを笑っていられなくなります。
 本書では地方で活躍した地侍たちの姿が活写されています。本気で世のため人のために命を賭けていた侍たちがいたのですね。江戸時代なんかは地侍の末裔の方が侍らしくて、武士はみんなお役人になってしまった感があります。
 いずれにしても、これが日本の底力だということがわかります。今日の難局を乗り切るには彼らの心意気を学ぶことから始めるべきでしょう。元気が出る本です。

(草思社2009年1800円+税)

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