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2010年1月20日 (水)

三浦しをん『まほろ駅前多田便利軒』

 面白かったです。直木賞受賞作ですが、なるほど納得です。
 舞台となっている東京都まほろ市というのは町田市がモデルのようですが、何だかかなり現実に忠実な感じのリアリティーがあります。登場人物も個性的で、実に巧みにストーリーが練られています。
 漫画やドラマに向いていると思ったら、実際に漫画の原作になっているようです。ドラマ的な感性というのは、当たり前の話ですが、いろいろなものをたくさん観て楽しんでいる人に備わっているものですが、その点ではわが国の漫画家というのはレベルが高いと思います。直木賞作家はこれなくしては賞をもらえないので、当然優れていますが、これが対照的に駄目なのは芥川賞作家だったりします。
 でも、もっと決定的に駄目なのは学者さんで、これは演劇や文学を研究している人でもほとんど例外なくダメです。まあ、ストーリーを分析してつまらない論文をでっち上げようとする魂胆では、ドラマ的な感性が養われるはずがありませんが、そのダメさ加減は一般大衆のレベルよりも格段に落ちるからから始末が悪いのです。
 これはわが国の哲学者でもそうで、演劇と哲学が深い関係にあるなんてことを直感できない人はたくさんいます。まあ、わが国の場合は哲学者ではなくて哲学「学者」ですから当然かもしれませんが、結局本気でものを考えていないのでしょう。
 話が飛びました。いつもですが。
 ところで、便利屋稼業の主人公と昔別れた奥さんとの問題は未解決になっているので、続編があるかもという期待はありましたが、本書の解説によると、確かに続編があるそうです。また本になるのを待ちたいと思います。それぞれの魅力的なキャラクターがもはや作者の手を離れて勝手に動き出していることでしょう。楽しみです。漫画の名作「じゃりン子チエ」みたいです。
 そうそう、いいセリフがあったので、紹介しておきます。
 「はるのおかげで、私たちは初めて知ることができました。愛情というのは与えるものではなく、愛したいと感じる気持ちを、相手からもらうことをいうのだと」(196頁)
 子どもが生まれたちょっと特殊なカップルの気持ちですが、特殊でなくてもそうですよね。気に入っています。
 
(文春文庫2009年543円+税)

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